2015年12月07日

不動産市場は全般に堅調も、オフィス需要など一部に弱い動き-不動産クォータリー・レビュー2015年第3四半期

基礎研REPORT(冊子版) 2015年12月号

金融研究部 主任研究員   増宮 守

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1――経済動向と住宅市場

国内経済は落ち込んだ第2四半期から回復が進まず、中国経済への懸念などを背景に、第3四半期もGDP成長率の前期比マイナスが続いた。先行き懸念から設備投資が伸び悩んでおり、9月の貿易収支は6ヶ月連続の赤字となった。個人消費についても、8月に持ち直した実質消費支出が9月に再び前年比-0.4%に落ち込んだ。 

住宅市場では、高騰が続いた建築コストが落ち着きつつあり、住宅着工戸数が再び増加傾向となっている。9月の新設住宅着工戸数は、77,872戸と5ヶ月連続で前年比プラスとなり、特に、貸家の着工戸数はピークであった2013年下期の水準にまで増加し[図表1]、土地所有者の相続税の節税を目的としたアパート建設需要の根強さを表している。

一方、9月の首都圏の分譲マンション新規販売戸数は2,430戸と前年比▲27%の減少であった。新築マンション価格の上昇に購買層の所得増加ペースが追いついておらず、販売戸数が伸び悩んでいる。

また、中古マンション価格も上昇が続いており、直近8月までの東証住宅価格指数では、東京の上昇が目立つ[図表2]。9月も東日本不動産流通機構(レインズ)による首都圏中古マンションの平均価格は上昇し、2,750万円(前年比+3.6%)であった。

価格上昇で低迷傾向にあった取引成約件数も、最近は8月まで5か月連続の前年比プラスとなっていた。ただし、9月は再び前年比▲5.9%と減少した。
 
新設住宅着工戸数、東証住宅価格指数

2――地価動向

地価については、昨年から顕在化した都市部での回復が続いている。国土交通省が発表した7月1日時点の基準地価では、地方圏の下落が続いたが、都市部の牽引により、商業地の全国平均が2009年以降はじめて前年比±0%の横ばいとなった。 四半期ベースでも、東京圏住宅地価は、前期比+0.3%と8四半期連続で上昇した。ただし、東京都以外の周辺県では既に頭打ちとなっている。
 

3――不動産賃貸市場の動向

(1)オフィス

東京の賃貸オフィス市場では、空室率低下と賃料上昇が続いている。東京のAクラスビルでは、第3四半期の空室率が4.0%(前期4.8%)に低下し、賃料もインデックスベースで前期比+6.8%の35,652円に上昇した[図表3]。一方、Aクラスビル以外では、賃料上昇は穏やかに止まっており、オフィス市場の二極化が進んでいる。

また、最近の空室率低下は、主に貸室面積の縮小に起因しており、2013、14年の旺盛な需要を背景とした賃貸面積の拡大によるものとは異なってきている[図表4]。加えて、新築ビルの空室率が2012年を上回る高水準にあり、新規供給量は大量供給のあった2012年より格段に小さいものの、需要の弱さが新築ビルの満室竣工などを難しくしている。

空室率および賃料の推移は堅調なものの、オフィス需要に弱さがみられ、加えて中国経済への懸念や米国の利上げ開始、国内の消費増税を控え、賃料上昇の継続が見込みづらくなってきている。
東京のAクラスビル賃貸市場、東京主要5区のオフィス需給
(2)賃貸マンション

賃貸マンション市場では、減速気味ながら賃料上昇が続いている。東京都区部の中古マンション賃料指数では、コンパクトタイプやファミリータイプで賃料上昇が減速したが、近年出遅れていたシングルタイプで賃料上昇の加速がみられた。

一方、東京の高級賃貸マンション市場では、賃料上昇に一服感が出ており、渋谷区では2四半期連続で下落した[図表5]。東京都の外国人人口は増加が続いているが、中国経済への懸念など海外のリスクに注意が必要である。
東京の高級賃貸マンション賃料
(3)商業施設・ホテル・物流施設

商業施設については、賃料上昇に一服感が出ているものの、テナントの売上動向は安定的とみられる。旧商業販売統計によると、既存店ベースの9月の売上高は、百貨店が前年比+1.8%、コンビニエンスストアが+1.3%となり、6ヶ月連続で増加した。

特に、百貨店では外国人向けの免税品売上が好調で、日本百貨店協会によると、9月の訪日外国人の購買客数は前年比+131.8%、売上高も+80%と32ヶ月連続で前年比プラスとなった。

訪日外客数は、2015年に入ってさらに加速しており、9月は前年同月比+46.7%の161万人[図表6]、年初累計で1,448万人と、既に2014年の年間1,341万人を上回った。特に中国からの訪日客数は9月に前年同月比+99.6%と倍増した。

商業施設以上に訪日外客数の影響が大きいホテル市場では、近年で最も高い稼働率が続いている[図表7]。また、客室単価も上昇し、STRグローバルによると、8月の全国のホテルのRevPARは前年同月比+14.7%の16,454.79円であった。

物流施設賃貸市場では、引き続き良好な需給が続いている。東京圏では、第3四半期の竣工が新木場物流センターの1件に止まり、空室率が3.5%(第2四半期3.6%)に改善した[図表8]。

一方、大規模なGLP鳴尾浜(延床面積110,373㎡)が竣工した大阪圏でも、旺盛な需要により上期竣工物件の空室消化が進み、空室率は4.5%(第2四半期4.8%)に改善した。

しかし、第4四半期には東京圏で過去最大の大量供給が控えている。その後も2016年を通して高水準の新規供給が続くため、しばらく空室率の上昇が続く局面となる。

大阪圏でも、第4四半期の新規供給予定はないものの、2016年の下期に大量供給が控えており、東京圏に少し遅れて需給悪化局面を迎える。
訪日外客数、全国ホテル客室稼働率、賃貸物流施設空室率

4――J-REITおよび不動産投資市場

2015年第3四半期の東証REIT指数(配当除き)は、中国など世界経済の減速懸念や相次ぐ公募増資による需給悪化などから、6月末比7.0%下落した。9月末時点の市場全体の分配金利回りは3.5%(対10年国債スプレッド3.2%)、NAV倍率は1.3倍、市場時価総額は10.0兆円となった。

J-REITによる第3四半期の物件取得額(引渡しベース)は3,403億円、年間累計で1兆2,704億円(前年同期比+16%)となり、昨年水準を上回っている。また、3社目のヘルスケア特化型REITとなるジャパン・シニアリビング投資法人が14物件・280億円で新規上場し、J-REITの銘柄数は51社(新設合併REITを含む)となった。

国内オフィス市況の改善にもかかわらず、J-REIT保有のオフィスビルの収益回復が遅れている。J-REIT保有ビルの賃貸事業収益(NOI)の推移を見ると、2015年上期(対象536棟)は前期比0.9%減少した[図表9]。リーマンショック以前に比べ、賃料上昇が緩やかな中、都心限定的な賃料上昇や、新築ビルとの競合による苦戦が窺われる。

不動産投資市場では、J-REITの取得額が前年を上回るなど、取引額は高水準で推移している。ただし、年間で5兆円を超えた2014年の取引額のペースには届いていないと推測される。

海外資金による国内不動産取得額は、年初に大きく膨らんだが、その後はペースが鈍っている。第4四半期に大規模な取得事例が発生しない場合、2015年の海外資金による年間取得額は2014年を下回る可能性がある。
J-REIT保有オフィスビルのNOI推移
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金融研究部   主任研究員

増宮 守 (ますみや まもる)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

(2015年12月07日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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