コラム
2015年12月15日

東京五輪にみるパラダイムシフト-「成熟社会」へのマイルストーン

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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ブラジル・リオの五輪開催が来年8月に迫り、2020年東京五輪も徐々に現実味を帯びてきている。一方、2017年9月に開催地が決定される2024年五輪の候補都市選びがはじまっているが、相次いで立候補辞退という動きが報じられた。今年7月にアメリカのボストンでは市民団体が反対の声をあげ立候補を断念、11月にはドイツのハンブルグが住民投票で反対結果が出たため立候補を取り下げた。一体、その背景にはどのような事情があるのだろう。

1984年ロス五輪以降、オリンピックは商業主義の色彩が強まり、巨額のテレビ放映権料や公式スポンサー料が五輪を支えている。しかし、開催地自治体の財政負担も決して小さくなく、オリンピックという巨大イベントには財政上の大きなリスクが伴っている。さらに経済成長を遂げた先進国では、発展途上国とは異なり、五輪に期待する新たなレガシー効果が不明確なのではないだろうか。

日本においても高度経済成長期に行われた1964年東京五輪では、新幹線や首都高速道路の整備など今日の経済発展のための基盤が築かれたが、2020年の五輪では少子高齢化・人口減少が進む21世紀の日本社会にとって、何が必要なレガシーなのかあまりはっきりしない。社会経済環境が著しく変化し、大きなパラダイムシフトが起こる今、日本の将来の針路と社会基盤について真剣に考えねばならない。

1964年大会は国の主導で戦後日本の復興・成長を全世界に示し、国威発揚や経済成長を促し、国民の間に一体感を醸成することができた。しかし、社会が成熟化し国民生活も多様化した状況での五輪開催は、国民の主体的な支持なくして成功はない。そんな状況認識が不十分だったがゆえに、新国立競技場や五輪エンブレムの問題が大きな混乱や様々な悪影響を与えたのではないだろうか。

白紙撤回された五輪エンブレムに替わる新エンブレムの応募が今月7日に締め切られた。参加条件を大幅に緩和した結果、前回の応募件数104点を大きく上回る1万4599点の申し込みがあったそうだ。来年1月初旬にエンブレム委員会が数点に絞り込み、商標登録後に一般公開して広く国民の声を聞き、12月中に行う審査も一部インターネット中継により選考過程をできる限りオープンにするという。

国際テロ事件やドーピング問題が発生する中で、オリンピック開催の意義やリスクが問われている。今回の新たなエンブレムの選考を契機に、多くの国民による様々な参加活動が展開されることを願う。2020年東京五輪が、真に『参加することに意義がある』成熟時代のオリンピックの在り方を体現し、半世紀後に日本の成熟社会へのマイルストーンになったと言われることを期待したい。

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2015年12月15日「研究員の眼」)

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