2015年12月04日

住宅取得に対する消費税率引き上げの影響-2013、2014年における戸建注文住宅の動向

社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎

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4|2013年に消費税率引き上げを考慮して取得を早めた取得層は75%以上

消費税増税の影響への対応に関する設問では(図表1-3-6)、2013年全体の「今後のアップを考慮して取得を早めた」の割合は75.2%に及び、2014年も66.6%と高くなっている。

40歳未満では、2013年が76.5%、2014年が69.5%と、全体をさらに上回っており、ここでも駆け込み需要の大きさがわかる。

経過措置により、2013年9月30日までに請負契約が成立していれば消費税率5%が適用された。したがって、9月の契約までは8%への引き上げに対する駆け込み取得が考えられ、10月以降の成約サンプルには、10%への引き上げを見越した取得が含まれているものと考えられる。

また、全体の「住宅面積を縮小した」は、2013年の9.0%から2014年の13.8%に、「希望する住宅のグレードを下げた」の割合が、2013年の6.5%から2014年には9.3%と、前年より高くなっており、消費税増税が、住宅の質に影響を与えた状況も読み取れる。

40歳未満では、2014年の「希望する住宅のグレードを下げた」の割合は8.3%と、全体より低いものの、「住宅面積を縮小した」の割合が14.6%と全体より高くなっている。(図表1-3-6)

消費税率の引き上げが駆け込み取得を促し、質を低下させるということが、年収が低い低年齢層に、より強かったことが分かる。
図表1-3-6消費税への対応回答比率の推移  (全体)
図表1-3-7 平均延べ床面積の推移(全体) 5|消費税の引き上げは、資金力の乏しい低年齢層の住宅の質を下げた

消費税引き上げの質への影響が、実際にどの程度のものか平均延べ床面積の推移で見てみたい。全体では、税率引き上げ前の2013年の131.3㎡から、引き上げが行われた2014年は129.2㎡に低下している。ただしその水準は税率引き上げが決定した2012年と同程度である。

世帯人員一人当たり床面積でみても、2013年の37.5㎡/人から、2014年が37.2㎡/人と低下しているが、2012年の36.6㎡に比べるとさほどの落ち込みではない。(図表1-3-7)

これを、年代別に見ると、やや異なる傾向がある。延べ床面積は、おおむね50代までは年齢が上がるほど広くなることに気づく。これは、資金力の違いによるものと考えられる。

特に2012年以降の推移をみると、平均延べ床面積が最も小さい20代は、2012年度から直線的に低下しており、30代は20代よりゆるやかではあるが同様に低下している。これに対し、40代は2012年度の133.2㎡から2013年度は134.1㎡とやや上昇し、2014年は反転して、2012年を下回る131.5㎡となっている。一方50代は、2012年の138.3㎡から、2013年が142.4㎡、2014年が144.3㎡と直線的に上昇している。(図表1-3-8)

このように、2013年に全体の平均延べ床面積が上昇したのは、主に高年齢層が平均延べ床面積を拡大させたことによる。2014年が2012年ほど落ち込んでいないのも、50代、70代以上が拡大させたことに起因する。

資金力のある高年齢層は、建築費の高騰、消費税増税という状況下においても延べ床面積を縮小させることなく、そうではない低年齢層は延べ床面積を縮小させることによって、資金的負担を調整していたと読み取れる。
図表1-3-8 世帯主年代別平均延べ床面積の推移
ちなみに60代以上の平均延べ床面積は、50代より低い値で推移しているが、一人あたり床面積で見ると、最も高くなっている。2014年で見ると、最も低いのは40代の34.5㎡/人である。次いで30代が35.6㎡、20代が38.4㎡となっている。30代、40代は、20代や70代以上より資金力があるものの、世帯人員が多いことから一人あたり床面積が小さくなると考えられる。

建築費の高騰や消費税増税は、質の面でも、住宅取得の主流層である30、40代に最も影響を与えているのである。(図表1-3-9)
図表1-3-9世帯主年代別世帯人員4人世帯の一人当たり床面積
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塩澤 誠一郎 (しおざわ せいいちろう)

研究・専門分野
都市・地域計画、土地・住宅政策、文化施設開発

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