2015年12月03日

拡大する物流施設への投資

金融研究部 不動産運用調査室長   加藤 えり子

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日本での物流施設の投資運用は、2000年代に入り、米国でリートとして上場する物流開発・運用専門会社が国内に進出し、近代的物流施設を開発したことに始まる。近代的物流施設とは、従来の一般的な保管型倉庫と比べると大型で、施設内での作業などにも配慮し、耐震性能・環境性能の高い施設で、米国では先んじて機関投資家や上場リートの投資対象となってきた。日本でも2005年に、物流特化型のリートが初めて上場し、2012年から13年にかけて物流特化型、商業施設などと物流施設を組み合わせた複合型のリートがそれぞれ2銘柄ずつ上場した。これにより国内上場リートの取得物件に占める物流施設の割合が高まり(図表1)、主要な投資セクターとして確立した状況となっている。
Jリートの用途別不動産取得額推移
物流施設を対象とした上場リートの増加とともに物流施設の期待利回りは低下してきている。この間、国内不動産全般に対して投資資金の流入が増えていることから、利回りの低下は物流施設に特有のものではないが、オフィスの期待利回りとの差は縮小してきた(図表2)。こうした利回りスプレッドの縮小は、取引量が増えるとともに上場リートの運用資産となることで、関連データが蓄積されたことによるリスクプレミアム縮小の影響もある。さらに物流施設のテナント需要が継続して高いという見通しが投資資金を呼び込み、期待利回りの低下につながっている。その根拠となっているのが、以下3つの要因だ。
 
 (1) 企業物流ではより戦略性が求められ、それに適合した新たな施設へのニーズ
 (2) 主要幹線道路の開通による物流拠点エリアの再編・増加
 (3) eコマースの拡大 

国内年金が、物流施設に投資する場合、上場リート、私募ファンド/私募リートの形態が想定される。昨今、企業年金の関心が高まり、投資も増えてきている私募リートの場合、複数の用途を投資対象としている複合型13銘柄のうち、4銘柄が物流施設を投資対象に含むとしており(将来組み入れ予定とするなどの銘柄も他に2つある)、物流特化型も2銘柄が運用されている。特定企業向けの物流施設を対象にした銘柄も、2016年の運用開始に向けて準備中という。従来型の私募ファンドの形態でも、これまで物流特化ファンドが組成されてきた。年金による物流不動産投資は、こうしたリートやファンドを経由した形で浸透してきている。
 
物流利回りとオフィス利回り、物流・オフィススプレッド
一方、海外の大型年金や政府系基金などは、直接投資に近い共同投資の形態で、開発中や賃貸稼働中の物流施設に投資するケースが多く見られる。国内に所在する物流施設に対しても、カナダ国民年金(CPPIB)がシンガポールの上場物流開発会社をパートナーとして開発投資を行っている。このような共同投資の形態は、投資額が大きいこと、物流施設投資の知見を持つ人員が投資家の側に求められることなどから、小規模な日本の企業年金では難しい。運用資産規模の大きい公的年金や共済組合などについては、今後は不動産を含むオルタナティブ投資を行う方向性もあり、内部人員やコンサルタントを確保することで、こうした共同投資をすることも想定される。
 
近代的な物流施設は恒常的に不足しているとされ、2015年も首都圏を中心に大量の新規供給が見込まれているが、これまでのところ、力強い需要により空室率の上昇は抑えられている。顕在化しつつある課題として、近代的物流施設では施設内での作業を前提としていることから、郊外型商業施設などと競合する人材確保がある。投資にあたっては働き手に配慮した質の高い施設を選別することも求められるだろう。
 

 
ⅰ 住宅、ホテルもオフィスとの利回りスプレッドが縮小してきている。固有の要因もあるが、関連データの蓄積などは共通の要因といえる。
ⅱ 複合型では、野村不動産、三菱商事、三井不動産、東急不動産の系列私募リートが物流施設を対象としている。物流特化型は佐川急便とザイマックスの合弁会社、物流会社センコーが組成した私募リートが運用中。
ⅲ 大和ハウス工業がユニクロ向けに開発した物流施設を対象とした私募リート。

 
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金融研究部   不動産運用調査室長

加藤 えり子 (かとう えりこ)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

(2015年12月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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