2015年11月27日

家計調査15年10月~2ヵ月連続の減少だが、消費の実態は緩やかな持ち直し

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.2ヵ月連続で市場予想を大きく下回る

総務省が11月27日に公表した家計調査によると、15年10月の実質消費支出は前年比▲2.4%(9月:同▲0.4%)と2ヵ月連続の減少となり、事前の市場予想(QUICK集計:前年比0.0%、当社予想は同0.7%)を大きく下回った。前月比でも▲0.7%(9月:同▲1.3%)と2ヵ月連続の減少となった。

月々の振れが大きい住居、自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)は前年比▲2.4%(9月:同▲0.9%)、前月比▲0.4%(9月:同▲1.8%)といずれも2ヵ月連続の減少となった。

実質消費支出の動きを項目別に見ると、電気冷蔵庫、電気洗濯機などの家具・家事用品(前年比7.9%)、設備修繕・維持などの住居(前年比7.9%)は高めの伸びとなったが、授業料等、補習教育などの教育(前年比▲13.4%)、自動車購入などの交通・通信(前年比▲7.5%)が大幅に減少したことが全体を大きく押し下げた。10項目中3項目が増加、7項目が減少した。

実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比▲1.6%(9月:同▲2.8%)と2ヵ月連続で低下し、10月の水準は7-9月期の平均よりも▲2.5%低くなった。7-9月期は前期比0.6%と2四半期ぶりに上昇したが、10-12月期は厳しいスタートとなった。
実質消費支出の推移/消費水準指数の推移(前回増税時との比較)

2.個人消費の実態は緩やかな持ち直し

家計調査の実収入と毎月勤労統計の現金給与総額 家計調査の消費支出はサンプル要因から実態よりも弱い動きとなっているとの指摘がある。確かに、家計調査(勤労者世帯)の実収入(名目)は9月が前年比▲1.5%、10月が同▲0.6%と減少しており、前年に比べ収入の低い世帯が多いことが足もとの消費支出の弱さにつながっている可能性がある。その一方で15年2月から8月までは毎月勤労統計の現金給与総額の伸びを大きく上回っており、家計調査の実収入が一貫して弱いわけではない。

もともと家計調査はサンプル数の問題などから振れの大きい統計であるため、消費の基調を判断するには月々の振れを均してみること、他の消費関連統計の動きと合わせてみることが必要である。

家計調査以外の10月の個人消費関連指標を確認すると、商業動態統計の公表は11月30日だが、すでに発表されている百貨店売上高は訪日外国人向けの売上高急増を主因として15年4月以降前年比で増加を続けているが、外国人向け以外の売上高は横ばい圏の動きにとどまっている。
 
一方、自動車販売台数は軽自動車増税の影響もあって前年比では減少が続いているが、季節調整値(当研究所による試算値)でみると8月以降、3ヵ月連続して前月比で増加している。また、外食産業売上高はこれまで客単価の上昇を客数の減少が打ち消す形で一進一退の動きが続いていたが、7月以降は4ヵ月連続で増加し、10月は客数が1年9月ぶりに増加に転じたことから、前年比5.0%の高い伸びとなった。個人消費は緩やかに持ち直していると判断される。

 
新車販売台数(含む軽自動車)の推移/外食産業売上高の推移
個人消費は先行きも緩やかな持ち直しが続くことが予想される。毎月勤労統計の夏季賞与は前年比▲2.8%と期待外れに終わったが、15年度の春闘で前年度を上回るベースアップが実現したことを反映し、所定内給与は着実に増加している。また、一人当たりの名目賃金は伸び悩んでいるものの、雇用者数(労働力調査ベース)は前年比1%程度の伸びを続けており、マクロベースの雇用者所得の押し上げに寄与している。さらに、原油価格下落に伴う物価上昇率の低下によって、家計が消費税率引き上げ後から苦しめられてきた物価高による実質所得の押し下げ圧力は緩和されている。当面は実質ベースの雇用者所得の増加が個人消費を下支えすることが見込まれる。
 
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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2015年11月27日「経済・金融フラッシュ」)

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