2015年11月27日

中国経済見通し~2016年は6.7%、17年は6.5%

三尾 幸吉郎

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3.物価、金融、為替

(図表11)インフレ率の推移 1|消費者物価は低位、工業製品は大幅下落

消費者物価は落ち着いている。今年1-10月期は前年同期比1.4%上昇と、昨年通期の同2.0%上昇より0.6ポイント低下し、今年の抑制目標(3.0%前後)を大きく下回っている。 

一方、工業製品は下落傾向が続いている。今年1-10月期の生産者価格(工場出荷)は前年同期比5.1%下落と、昨年通期の同1.9%下落を3.2ポイント下回る大幅下落となった。原油安や工業製品の供給過剰が背景にある(図表-11)。
 
(図表12)金融市場の動き 2|金融は緩和方向への調整を継続中

景気低迷、消費者物価の落ち着き、工業製品の下落を受けて、中国人民銀行は金融を緩和方向へ調整している。昨年11月以降6回に渡って預金基準金利(1年)を引き下げ、引き下げ幅は累計で1.5%に達した。また、預金準備率も今年2月以降4回に渡って引き下げている。しかし、海外への資金流出もあって銀行間での資金需給は必ずしも潤沢にはなっていない模様で、SHIBOR翌日物は預金基準金利(1年)を上回る1.8%前後で高止まりしている(図表-12)。
 
(図表13)人民元レート(CNYとCNH)の推移 3|人民元はボックス圏ながら弱含みの動き

中国人民銀行は8月11日、人民元の対米国ドル為替レートの中間値(基準値)の市場化と基準性を高めるため、中間値の形成メカニズムを改善すると発表した。この措置により、市場実勢と基準値の乖離は解消したが、人民元は急落した(基準値で約4.5%、市場実勢で約3%下落)。

その後、1米ドル=6.3~6.4元のボックス圏で推移しているが、米利上げが視野に入ってくる中で、オフショア市場(CNH)では、オンショア市場(CNY)よりもほぼ恒常的に元安水準で取引されており、人民元の地合いは弱い(図表-13)。元買いドル売り介入(含む警戒感)で水準を維持しているに過ぎない状況と思われる。

4.経済見通し

(図表14)経済予測表/(図表15)プラス材料・マイナス材料 中国経済の見通しは15年が前年比7.0%増、16年が同6.7%増、17年が同6.5%増と、緩やかな成長率の鈍化(ソフトランディング)を予想している。需要項目別に見ると、最終消費は3ポイント台後半のプラス寄与、総資本形成は製造業・不動産業では鈍化傾向が続くものの、消費サービス関連・インフラ関連は堅調で3ポイント前後のプラス寄与、純輸出はゼロ近辺と想定している(図表-14、15)。
また、ソフトランディングの中にも山谷はありそうだ。15年10-12月期は住宅市場の底打ちで家具などの販売が回復、10月に開始された小型車減税の効果で自動車販売も回復してきていることから、一旦は7%成長を回復するだろう。但し、製造業の過剰投資・過剰債務や地方政府債務の問題解決には数年を要すると考えられることから、その後の成長率は再び鈍化傾向と予想している(図表-16)。
(図表16)経済見通し測表
(図表17)新築商品住宅(除く保障性住宅)価格の変動状況 〔下方リスクについて〕

下方リスクとしては住宅市場の変調が挙げられる。11月18日に公表された10月の70大中都市住宅販売価格変動状況を見ると、上昇した都市よりも下落した都市の方が多かった(図表-17)。今春、住宅販売が回復して、上海や北京などの住宅価格が上昇に転じ、その流れが地方都市へと波及すれば、在庫が減り着工が増えて好循環になると期待された。しかし、今回の住宅関連統計を見ると、好循環が実現する可能性は低下したと言わざるを得ない。住宅市場の変調が再びリスク要因として浮上したといえるだろう。
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三尾 幸吉郎

研究・専門分野

(2015年11月27日「Weekly エコノミスト・レター」)

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