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4――有能な人的資源の保有・活用
上記で述べた人的資源を巡る状況は、欧米や日本など先進地域に比べ相対的に生保事業の歴史が浅く有能な人材プールが少ないアジアの現状において必要とする人材の育成・確保を行うための取組みのあり方やその発展段階を示している。今後、市場の発展に伴い経営の現地化が進む中では、各社ともにリーダー教育に注力している成果が現れ、より多くのポストがアジア人材によって担われることになるものと推量される。
5――おわりに
本稿では、代表的な外資3社を挙げて、その重要点と考えられる諸点について述べた。冒頭に述べたように、いずれもアジア地域において長い事業の歴史を有するが、それは、事業の歴史の浅い後発の企業にとってチャンスがないということを必ずしも意味しない。この点で、プルデンシャルが、アジア事業を本格化したのは、1994年にアジア地域統括拠点を設立して以来のことであるという事例が参考になろう。さらに、アジア各市場の成長と変化の中で、後発の進出企業が成功する余地は十分にあると考えられる。
そのために、重要と考えられるポイントは、(1)企業としてのアジア事業戦略の明確化、(2)「グローバル標準化」と「現地適応化」の観点から、自社の強み(商品、販売、経営管理の仕組み・ノウハウなど)を活かすこと、(3)多様な能力・知識と着想・経験を有する人材(本国人材、第三国籍人材、進出国人材)の育成・活用、(4)成功・失敗を次のステップや別の拠点での展開に活かせる組織学習能力である。加えて、企業やそのリーダーによる粘り強さは、様々な局面・課題を乗り越えて長期的な視点で海外市場において成功を収める上での最重要事項といえよう。
<主要参考文献>
AIA Group Limited (AIA) (2010), Prospectus for IPO, 18 November, 2010.
AIA Group Limited (AIA) (2015), Annual Report 2014.
Prudential Corporation Asia (PCA) (2008), The Pru Story in Indonesia.
Prudential Plc (Prudential) (2010), Prospectus for Right Issue, 17 May, 2010.
Prudential Plc (Prudential) (2015), Annual Report 2014.
Manulife Financial Corporation (MFC) (2015), Annual Report 2014.
平賀富一(2013)「生命保険企業の国際事業展開に関する研究」『横浜国際社会科学研究』第17巻第6号。
同上(2015)「【アジア・新興国】アジア生命保険市場の動向・変化と今後の展望」『基礎研レター』ニッセイ基礎研究所、2015年7月21日。
2 株価・為替等の変動要素を除いたベースの利益指標。
3 他方、3社同様、国際的に有力な保険グループであるAllianz(ドイツ)、AXA(フランス)において、アジア地域の、グループ全体の収入に対する割合は、それぞれ5%、8%と僅少である。
平賀 富一
研究・専門分野
(2015年11月17日「基礎研レター」)
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