2015年11月16日

【タイGDP】7-9月期は前年同期比+2.9%~公共投資と観光は鈍化も、輸出持ち直しで景気減速を回避

経済研究部 研究員   斉藤 誠

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1.7-9月期は前年同期比+2.9%

2015年7-9月期の実質GDP成長率1は前年同期比+2.9%の増加と、前期の同+2.8%から上昇したほか、Bloomberg調査の市場予想(同+2.5%)を上回った。また前期比(季節調整値)は+1.0%と前期の同+0.3%から上昇した。

需要項目別に見ると、純輸出の改善が成長率上昇の主因となったことが分かる(図表1)。民間消費は前年同期比+1.7%(前期:同+1.6%)と食料・飲料や住宅・光熱費を中心に上昇し、政府消費は前年同期比+1.0%(前期:同+3.8%)と低下した。また投資は前年同期比▲1.2%(前期:同+2.7%)とマイナスに転じた。民間投資は前年同期比▲6.6%(前期:同▲3.2%)とマイナス幅が拡大し、公共投資は前年同期比+15.9%と高水準ながらも前期の同+24.7%から低下した。純輸出は、まず輸出が前年同期比+1.8%(前期:同+1.0%)と上昇した。サービス輸出は前年同期比+17.5%(前期:同+24.9%)と鈍化したものの、財貨輸出は前年同期比▲1.9%(前期:同▲4.0%)とマイナス幅が縮小した。また輸入は前年同期比▲2.4%(前期:同▲0.4%)と内需の縮小を受けて低下した。その結果、外需の成長率への寄与度は+3.2ポイントと、前期の+1.0ポイントから拡大した。

供給項目別に見ると、農林水産業が前年同期比▲5.7%(前期:同▲6.2%)とマイナス幅が縮小したものの、干ばつの影響を受けてコメ、トウモロコシ、パーム油などの穀物を中心に生産量が落ち込んでいる。マイナス幅が縮小した。また主力の製造業は前年同期比+0.8%(前期:同▲0.6%)と自動車、食料・飲料、石油製品を中心にプラスに転じた(図表2)。その他の産業では、卸売・小売業が前年同期比+3.9%(前期:同+3.7%)、鉱業が前年同期比+0.8%(前期:同▲0.6%)、不動産業が前年同期比+2.5%(前期:同+1.4%)など上昇した業種が多かった。
 
(図表1)タイの実質GDP成長率(需要側)/(図表2)タイの実質GDP成長率(供給側)


 

1 11月16日、タイの国家経済社会開発委員会事務局(NESDB)が2015年7-9月期の国内総生産(GDP)を公表。

2.公共投資と観光は鈍化も、輸出持ち直しで景気減速を回避

7-9月期は公共投資と観光業が鈍化したものの、財貨輸出の持ち直しと輸入縮小が成長率を押し上げ、全体として景気減速は免れた。しかし、足元の海外需要の弱さを鑑みれば輸出の持ち直しが続く可能性は低く、また公共投資と観光業が再び加速するとは期待できないだけに、政府の景気刺激策の効果が上がらなければ2%台の成長が続く恐れがある。

輸出は景気減速しているアジア向けを中心に引き続き減少したものの、マイナス幅は縮小した。緩和的な金融政策がバーツ安を促して価格競争力が向上したことや、タイ製品が中国企業のサプライチェーンに組み込まれているために中国の通貨切り下げの悪影響が表れなかったことも、輸出の持ち直しに寄与したと見られる。

一方、景気を支える公共投資と観光業は鈍化した。公共投資は輸送インフラや水資源などの開発案件や追加の景気刺激策の執行開始によって前期から更に拡大したが、前年比では鈍化した。また観光は8月のバンコク爆弾テロを受けて中国人観光客数が減少し、9月の外国人観光客数は前年比8.7%増と7月の同39.4%増から失速した(図表3)。今回の爆弾テロによる減速は短期的なものに止まるだろうが、これまでの公共投資と観光業の大幅な増加は昨年5月の軍事クーデター後の政治機能再開による影響が大きく、今後の景気の牽引力への期待は持ちにくい。

また民間部門は冴えない状況が続いている。民間消費は、農産物価格の低迷や干ばつ被害による農業所得の伸び悩みや消費者マインドの悪化、さらには金融機関も高水準の家計債務を背景に貸出に慎重になっていることが重石となり、回復の動きは鈍い。民間投資も景気の先行き不透明感や国内外の需要の弱さから企業は過剰な生産能力を抱えており、2期連続の減少となった。

しかし、政府は8月に内閣改造を行って以降、相次いで景気刺激策を打ち出しており、政府は農家や低所得者、中小企業などを対象に短期的な景気対策を打ち出しつつ、来年には大型インフラ事業を着工するなど中期的な開発を進めて製造業投資の拡大を狙う。こうした政府の動きを受けて、消費者と企業のマインドが足元で上向きに転じている(図表4)。今後、海外経済が回復して輸出が持ち直すまでの間、政府主導の内需底上げによって景気減速を回避できるかは注目だ。
 
(図表3)タイの外国人観光客数/(図表4)タイの企業と消費者の景況感

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経済研究部   研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
アジア・新興国経済

(2015年11月16日「経済・金融フラッシュ」)

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