2015年10月29日

必要な道路インフラ投資を決定できない米国議会-注目される道路インフラ投資、ただし、今後も厳しい道のり

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨

米国では、経済活動を支える交通インフラの中で、道路が重要な役割を担っている。しかしながら、米国の道路インフラでは渋滞や路面の悪化が激しく、それに伴う経済損失が大きくなっている。さらに、国際競争力ランキングでも、経済力に比して見劣りする状況となっており、国際競争の点からも改善が求められている。

道路インフラの劣化が進んだ背景には、財源不足がある。道路インフラの財源で重要なのは燃料税や重量税の利用者負担だが、燃料税収は物価を加味した実質ベースでは減収しており、徴収方法の問題点が指摘されている。

一方、足元では低金利のほか、道路建設費用や建設関連の雇用者数の低迷など、道路インフラを拡大する好機となっている。IMFもこのような環境下では経済対策としてインフラ投資は有望であるとして財政余力のある国に対してインフラ投資拡大を提言している。

こうした中、オバマ大統領は、15年2月に道路インフラ投資を今後6年間に総額3,170億ドル実施する予算案を議会に提案した。年平均528億ドルの投資額は15年度予算の水準を29%上回っている。

ただ、米国では与野党ともにインフラの不備や投資拡大の必要性についての認識は共有されているものの、財源議論については政治的な対立が続いており、議論が集約されていない。与野党間で考え方に大きな開きがあるほか、野党共和党内でも大きな違いがあり、インフラ投資を拡大する上での最大の障害となっている。現状ではオバマ大統領が提案する道路インフラ投資の拡大は実現が困難な状況となっている。

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2015年10月29日「基礎研レポート」)

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