2015年10月21日

貿易統計15年9月~7-9月期の外需寄与度はほぼゼロに

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・輸出入ともに数量ベースの減少が続く
・7-9月期の輸出数量指数は全ての地域向けで低下
・7-9月期の外需寄与度はほぼゼロに


■要旨

財務省が10月21日に公表した貿易統計によると、15年9月の貿易収支は▲1,145億円と6ヵ月連続の赤字となり、事前の市場予想(QUICK集計:1,000億円の黒字、当社予想は818億円の黒字)を下回る結果となった。輸出は前年比0.6%と8月の同3.1%から伸びが鈍化したが、原油価格の大幅下落を主因として輸入の減少幅が8月の前年比▲3.1%から同▲11.1%へと大きく拡大したため、貿易収支は前年に比べ8,475億円の改善となった。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲3.9%(8月:同▲4.1%)、輸出価格が前年比4.6%(8月:同7.5%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲2.0%(8月:同▲0.7%)、輸入価格が前年比▲9.3%(8月:同▲2.4%)であった。

9月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲4.7%(8月:同▲7.7%)、EU向けが前年比2.1%(8月:同▲5.0%)、アジア向けが前年比▲4.2%(8月:同▲3.3%)となった。
米国経済は底堅く推移しているが、エネルギー関連投資、IT関連需要の弱さを反映した一般機械、半導体電子部品などの大幅な落ち込みが米国向け輸出を押し下げている。
7-9月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲4.0%(4-6月期:同▲4.5%)、EU向けが前期比▲3.5%(4-6月期:同▲1.6%)、アジア向けが前期比▲0.7%(4-6月期:同▲5.4%)、全体では前期比▲1.4%(4-6月期:同▲3.8%)となり、いずれの地域向けも2四半期連続で低下した。輸出は14年度末にかけて持ち直していたが、海外経済の減速を受けて15年度に入り弱い動きが続いている。
一方、7-9月期の輸入数量指数(当研究所による季節調整値)は前期比0.1%(4-6月期:同▲2.5%)と小幅な上昇となったが、4-6月期の落ち込みを考えれば基調は弱い。国内需要の弱さを反映し輸入は低調に推移している。

9月までの貿易統計と8月までの国際収支統計の結果を踏まえて、15年7-9月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出、輸入ともに前期比1%台半ばの増加となることが見込まれる。通関統計の財の輸出は低調だったが、GDP速報の推計に用いられる国際収支統計の財の輸出は通関統計よりも強めであること、訪日外国人の急増からサービス輸出が高い伸びとなったこことが、GDP統計の財貨・サービスの輸出が2四半期ぶりに増加した理由である。この結果、7-9月期の外需寄与度は前期比でほぼゼロ%(4-6月期は前期比▲0.3%)となることが予想される。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2015年10月21日「経済・金融フラッシュ」)

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