2015年10月07日

2015・2016年度経済見通し

基礎研REPORT(冊子版) 2015年10月号

経済研究部 経済調査室長   斎藤 太郎

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1―3四半期ぶりのマイナス成長

2015年4-6月期の実質GDPは前期比▲0.3%(前期比年率▲1.2%)と3四半期ぶりのマイナス成長となった。中国をはじめとした海外経済減速の影響から輸出が前期比▲4.4%と大幅に減少し、外需寄与度が前期比▲0.3%(年率▲1.1%)と成長率を大きく押し下げたことがマイナス成長の主因である。住宅投資(前期比1.9%)、公的固定資本形成(前期比2.1%)は高めの伸びとなったが、民間需要の柱である民間消費が前期比▲0.7%、設備投資が同▲0.9%の減少となったため、国内需要も3四半期ぶりに減少した。

 

1│低迷が続く個人消費

個人消費は駆け込み需要の反動を主因として消費税率引き上げ後に急速に落ち込んだ後、反動の影響が和らぐ中でいったん持ち直しつつあったが、2015年度入り後は再び弱い動きとなっている。
   GDP統計の実質民間最終消費支出は、2014年4-6月期に前期比▲5.0%と急速に落ち込んだ後、3四半期連続で増加したが、その間の伸びは1%に過ぎなかった。2015年4-6月期に前期比▲0.7%の減少となったことで増税直後の最悪期(2014年4-6月期)をわずか0.3%上回る水準に逆戻りし、消費増税前の駆け込み需要が本格化する前の2013年10-12月期と比べると▲2.7%も低い水準となった[図表1]。
   2015年4-6月期の落ち込みは特に大きかったが、消費増税後の個人消費は1年以上にわたって低迷が続いていると捉えることができる。
   消費税率引き上げの影響一巡や原油価格の下落に伴い、ここにきて物価高による実質所得の押し下げ圧力は和らいでいるが、その一方で名目賃金の伸び悩みが消費の抑制要因となっている。春闘賃上げ率が前年度を上回ったことを反映し、2015年度に入り所定内給与の伸びは高まっているが、夏のボーナスは期待はずれに終わったようだ。毎月勤労統計の特別給与は6月に前年比▲6.7%の大幅減少となった後、7月も同0.3%の小幅増加にとどまり、6、7月の合計では前年比▲4.1%の減少となった。毎月勤労統計の夏季賞与に関する最終結果は、6~8月の特別給与のうち賞与として支給されたものを特別集計したものが、11/9に公表される予定だが、前年比で明確な増加という大方の事前予想を大きく下回る可能性が高くなった。



 

2│インバウンド消費のインパクト

円安の進行、ビザの発給要件緩和、消費税免税制度拡充などを背景とした訪日外国人旅行者数の急増が続いている。2014年の訪日外国人旅行者数は前年比29.4%増の1,341万人となり、この3年間で2.2倍となった。2014年10月に免税対象から外れていた食品、化粧品、薬品等の消耗品も含め全ての品目が免税対象となったこともあり、2015年上期は前年比46.0%と伸びがさらに加速している。
   訪日外国人旅行者数の急増は小売業、宿泊業、旅行業などに大きな恩恵をもたらしている。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によれば、2015年4-6月期の旅行消費額は前年同期比82.5%増の8,887億円となった。また、日本百貨店協会によれば、外国人観光客の売上高は大幅な増加が続いており、免税制度が拡充された2014年10月以降は前年同月比で2~4倍の急増となっている。この結果、外国人観光客の売上高が百貨店売上高に占める割合は2014年4-6月期の1.1%から2015年4-6月期には3.6%へと急上昇した。
   ただし、その一方で外国人(非居住者)の日本国内における消費額 が国内の消費額全体に占める割合は1%以下、GDP比では0.5%程度にとどまっている[図表2]。外国人による日本国内での消費(GDP統計ではサービスの輸出に計上される)が実質GDP成長率をどれだけ押し上げたかを試算すると、2015年4-6月期は前期比0.03%(年率0.11%)で、過去最大となった2014年10-12月期でも前期比0.08%(年率0.31%)にとどまっている。訪日外国人旅行者数の急増が一部の業界に大きな恩恵をもたらしていることは確かだが、日本経済全体に与える影響は現時点では限定的といえるだろう。



 

2―実質成長率は2015年度1.0%、2016年度1.8%を予想

先行きの日本経済を見通す上で明るい材料は、原油価格下落に伴う輸入物価の低下により海外からの所得流入が続いていることである。GDP統計の交易利得は2015年1-3月期の5.1兆円に続き、4-6月期も2.0兆円の改善となった。
   4-6月期は海外からの所得流入が続く中、国内民需は低調に終わったが、7-9月期は消費者物価上昇率がマイナスに転じることが家計の実質購買力の上昇につながり、個人消費を下支えすることが期待される。また、交易条件の改善が好調な企業業績をさらに押し上げ、設備投資の回復を後押しするだろう。一方、輸出は7-9月期には前期比で増加に転じるものの海外経済の減速が続くことから持ち直しのペースは緩やかにとどまることが見込まれる。
   実質GDP成長率は2015年度が1.0%と2014年度のマイナス成長(▲0.9%)の後としては低成長にとどまるが、2016年度は2017年4月に予定されている消費税率引き上げ(8%→10%)前の駆け込み需要による押し上げもあって1.8%と高めの成長になると予想する[図表3]。



 

◎-消費者物価はいったんマイナスへ

消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、消費税率引き上げ後の景気減速、原油価格下落に伴うエネルギー価格低下の影響などから、2014年4月の前年比1.5%(消費税の影響を除くベース)をピークに鈍化傾向が続き、2015年入り後はゼロ近傍の推移となっている。ガソリン、灯油価格はすでに前年比で二桁のマイナスとなっているが、燃料費調整が市場価格に遅れて反映される電気代、ガス代は下落幅が今後さらに拡大する。コアCPI上昇率に対するエネルギーの寄与度は2015年4-6月期の前年比▲0.6%から7-9月期には同▲1%程度まで拡大することが見込まれる。コアCPI上昇率は2015年7-9月期に前年比でマイナスに転じる可能性が高い。
   一方、物価上昇がある程度継続してきたこともあり、かつてに比べて企業の値上げに対する抵抗感は小さくなっている。実際、円安による原材料価格の上昇に対応した価格転嫁は幅広い品目で行われており、品目数でみれば上昇品目数が6割を超え下落品目数を大きく上回っている[図表4]。値上がりが目立つのは食料品だが、トイレットペーパー、ポリ袋などの日用品、宿泊料、テーマパーク入場料、月謝類などのサービスでも幅広い品目で値上げが行われている。コアCPI上昇率は前年比でゼロ近傍となっているが、物価上昇の裾野は広がっている。
   また、原油価格下落の効果もあって先行きは潜在成長率を上回る成長が続くため、需給面からの物価押し上げ圧力も徐々に高まっていくことが見込まれる。コアCPI上昇率は2015年度末までには再びプラスとなり、原油価格下落の影響が一巡する2016年度入り後には1%台まで伸びを高めるだろう。コアCPI上昇率は2015年度が前年比0.1%、2016年度が同1.3%と予想する。


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経済研究部   経済調査室長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2015年10月07日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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