2015年09月17日

貿易統計15年8月~輸出入ともに低調

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・輸出数量の落ち込み幅が拡大
・輸出数量指数は全ての地域向けで大きく低下
・先行きの貿易赤字は縮小も黒字には至らず


■要旨

財務省が9月17日に公表した貿易統計によると、15年8月の貿易収支は▲5,697億円と5ヵ月連続の赤字となった。輸出が前年比3.1%と7月の同7.6%から伸びが鈍化したが、輸入が前年比▲3.1%(7月:同▲3.2%)と8ヵ月連続で減少したため、貿易収支は前年に比べ3,836億円の改善となった。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、円安の影響で輸出価格は前年比7.6%(7月:同8.4%)と高い伸びを続けたが、輸出数量の減少幅が7月の前年比▲0.7%から同▲4.2%へと拡大した。輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲0.7%(7月:同▲2.9%)、輸入価格が前年比▲2.4%(7月:同▲0.2%)であった。

8月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲7.7%(7月:同▲0.2%)、EU向けが前年比▲5.0%(7月:同5.5%)、アジア向けが前年比▲3.3%(7月:同▲0.4%)となった。中国向けの輸出数量は前年比▲9.2%と7ヵ月連続の減少となり、7月の同▲1.3%から減少幅が大きく拡大した。8/12に発生した天津爆発事故の影響を受けている可能性もあるが、8月は全ての地域向けで輸出数量が大きく落ち込んでいるため、現時点では中国向けの落ち込みがその影響によるものだとは言い切れない。爆発事故の影響を見極めるためには9月の結果を待つ必要がある。
地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比▲8.0%(7月:同2.7%)、EU向けが前月比▲9.7%(7月:同1.2%)、アジア向けが前月比▲3.7%(7月:同0.4%)、全体では前月比▲0.7%(7月:同▲0.1%)となった。
一方、8月の輸入数量指数は前月比0.7%(7月:同▲1.2%)と2ヵ月ぶりに上昇したが、7,8月の平均は4-6月期よりも▲0.7%低い水準にある。国内需要の弱さを反映し輸入は低調に推移している。

8月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=59.2ドル(当研究所による試算値)となり、6月の63.9ドルから低下した。ドバイ原油は6月には60ドル台まで上昇したが、7月以降は下落基調となり、足もとでは40ドル台半ばで推移している。通関ベースの原油価格は9月には50ドル程度まで下落することが見込まれる。原油価格の下落に伴う輸入価格の低下に加え、輸入数量も低迷が続いているため、先行きの貿易赤字(季節調整値)は縮小することが見込まれる。ただし、その一方で海外経済の減速を背景として輸出も伸び悩みが続くことが予想されるため、貿易収支が黒字化するまでには至らないだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2015年09月17日「経済・金融フラッシュ」)

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