2015年09月15日

女性活躍と企業業績の関係―先行研究及び韓国の積極的雇用改善措置の検討や女性活躍と企業成果への決定要因分析―

生活研究部 准主任研究員   金 明中

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■要旨

  • 2013年における日本の女性管理職比率は11.2%で、アメリカの43.4%やフランスの36.1%等他の先進国と比べるとかなり低く、正規職として働いていたとしても管理職として活躍できるような事業所内の教育システムや機会の提供はまだ整備が不十分であるように考えられる。
  • 女性の活躍と企業業績に関する実証分析の一部は、女性の活躍と企業業績は正の関係であり、さらに統計的に有意であるという結果を出しているが、その反対の結果を主張する研究もあり、その結果は収斂していない。
  • 韓国では政府、地方自治体及び事業主などが現存する雇用上の差別を解消し、雇用平等を促進するために2006年3月から積極的雇用改善措置制度を実施している。
  • 積極的雇用改善措置制度は、従業員数500人以上の事業所を対象にしており、女性従業員や女性管理職比率が同一業種の平均値の60%(2015年から70%)に達していない企業は、雇用改善の目標値や実績、そして雇用の変動状況などを雇用労働部に報告する義務がある。
  • 制度改正により積極的雇用改善措置制度が適用される企業の女性労働者数は2006年の45.9万人から2014年には115.8万人に2.5倍も増加した。また、女性管理者数も同期間に1.4万人から4.5万人に3.2倍も増加している。
  • 韓国の企業パネルデータを用いた実証分析の結果、女性従業員比率や女性管理職比率と企業利益の間では統計的に有意な結果は出なかった。しかしながら、積極的雇用改善措置を実施している企業の方で企業利益が高いという結果が出ており、積極的雇用改善措置の実施は企業の女性活躍度を高めるのに効果があることが分かった。
  • 女性雇用率と企業規模の関係では、企業規模が大きくなればなるほど、女性の雇用率が高いという結果が出た。そして、雇用の多様性を示す非正規職比率が高い企業ほど女性雇用率は増加したが、女性正規職の割合は減少した。この結果から企業は企業利益を最大化するために人件費が相対的に安い非正規労働者を優先的に雇っていることが伺える。
  • また、成果配分制度を実施している企業では女性正規職比率が高く、教育訓練制度を実施している企業では女性管理職比率が低いという結果が出て統計的に有意であった。この結果は、先行研究でも確認されたように成果配分制度を実施している企業は生産性よりも賃金が低い女性を雇用する(ベッカーの差別仮説)ことにより、企業利益を最大化した可能性がある。一方、教育訓練制度を実施している企業ほど女性管理職比率が低いのは、女性に対する統計的差別により管理職になるための教育訓練制度が女性に十分に提供されていなかったのが理由ではないかと考えられる。
  • 女性活躍推進法は韓国の積極的雇用改善措置と類似している点が多いが、韓国は日本と異なり、対象企業が女性雇用率や女性管理職比率を該当業種の平均70%に達するように基準を設定しているなど制度の強制力は韓国の方がより大きい。数値目標の設定に対しては賛否両論があるので一概には言えないが、同じ課題に対して少し異なる方法で女性活躍を推進している日韓政府の対策がどのような結果をもたらすか関心を持って見守る必要がある。
  • 分析の結果等を参照すると女性がより活躍できる社会を構築するためには政府の支援や制度の整備が重要であることがわかる。しかしながら、データの制限により、分析に反映することはできなかったが、政府の支援や制度の整備以外に重要なのは、経営者などの意識改革であるだろう。
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生活研究部   准主任研究員

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
社会保障論、労働経済学、日・韓社会保障政策比較分析

(2015年09月15日「基礎研レポート」)

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