2015年09月07日

中国の株価急落をどう見るか?

基礎研REPORT(冊子版) 2015年9月号

三尾 幸吉郎

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中国で株価が急落した。中国株の代表的株価指数である上海総合は6月12日の5166.35をピークに下落に転じて、7月8日には3507.19と高値から32.1%も下落した(終値ベース)。
   相場急変を受けて中国政府が矢継ぎ早に株価対策を打ち出したことから一旦は急反発、7月23日には底値から17.6%高い4123.92まで戻した。しかし、その反発も長続きせず、株価は一進一退を繰り返している。



 

今回の株価上昇過程を振り返ると、昨年上期には(1)社債や理財商品のデフォルト(債務不履行)、(2)新規株式公開(IPO)の再開に伴う需給悪化、(3)住宅市況悪化に伴うバブル崩壊の3つが懸念されたものの、業績悪化を相当程度織り込んだ株価水準(PERは10倍前後)だったことから下値も堅く、2000前後で小康状態だった。




 

昨年夏になると、景気がやや回復したことで信用不安が薄れるとともに、地方都市で住宅購入規制を緩和する動きが広がったことで住宅バブル崩壊に対する懸念が薄れて株価は上昇し始め、IPOで新規公開した企業の株価が堅調で公開価格の5倍超まで買われる銘柄が出現したことから需給悪化懸念が薄れるとともに徐々に上昇の勢いが増し、11月21日に中国人民銀行が利下げを発表すると一気に勢いを増した。
   今年1月には信用取引に対する監視強化で株価は一旦調整、4月には中国証券監督管理委員会(証監会)が個人投資家に対して株式投資のリスクを認識するよう注意喚起したことで再調整したものの、追加金融緩和が続いたため上昇基調は崩れなかった。
   その中国株が急落した原因は様々挙げられているが、主に3つあると思われる。第1に中国政府が株価高騰に警戒感を強め「場外配資」と呼ばれる信用取引制度外の株式投資向け融資の規制に乗り出したこと、第2に相場急落で損失を被った投資家の自殺が報道されてセンチメントが急激に悪化したこと、第3に住宅価格が反転するなど景気に改善の兆しが現れる中で、これまで最大の買い材料だった“追加景気対策”への期待が萎んだことである。そして、信用取引の買い残を抱えた投資家は、相場下落で「追証」を求められ、換金のための売りがでて、売りが売りを呼ぶ展開となった。
   今後を考えると、相場が短期間に急落したため、高値掴みした買いポジションが溜まったと見られ、相場が戻せば個人投資家の売りが大量にでる可能性が高い(所謂“やれやれ売り”)。他方、上海総合の現水準は株価収益率(PER)で19倍前後と、歴史的に見ても、国際的に見ても過度に割高とはいえないため、相場が下落すれば機関投資家が購入を増やすだろう。従って、当面は一進一退が続きそうである。
   また、足元の景気指標は好悪入り混じった状況となっており、企業業績などファンダメンタルズの改善に自信が持てる状況ではない。しかし、これまでの景気対策が功を奏して景気が上向く可能性もある。従って、今後は景気指標の動きに注目したい。

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(2015年09月07日「基礎研マンスリー」)

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