2015年08月28日

家計調査15年7月~猛暑効果は限定的、持ち直しのペースは鈍い

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・実質消費支出は2ヵ月連続で予想外の減少
・夏のボーナスに過度の期待は禁物

■要旨

総務省が8月28日に公表した家計調査によると、15年7月の実質消費支出は前年比▲0.2%と2ヵ月連続の減少となり、事前の市場予想(QUICK集計:前年比1.0%、当社予想は同1.7%)を下回る結果となった。前月比では0.6%(6月:同▲3.0%)と2ヵ月ぶりの増加となった。月々の振れが大きい住居、自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)は前年比1.1%(6月:同▲1.4%)と2ヵ月ぶりの増加となり、前月比でも1.1%(5月:同▲2.6%)と2ヵ月ぶりの増加となった。6月の天候不順から7月は一転して猛暑となったため、その効果から飲料、エアコンなどが大幅に増加したが、消費全体を大きく押し上げるまでには至らなかった。

6月の家計調査の実質消費支出が減少したのは月々の振れが大きい住居(設備修繕・維持等)の落ち込みによるところが大きく、この結果を過度に悲観する必要はないだろう。ただし、住居を除いた消費水準指数(季節調整値)も前月から低下していること、猛暑による一定の押し上げにもかかわらずその他の消費関連統計もそれほど強くないことからすれば、実質賃金の伸び悩みを主因として個人消費の持ち直しは依然として緩慢にとどまっていると判断される。
6月の実質賃金上昇率が前年比▲3.0%と大きく落ち込んだのは、夏のボーナスの支給時期が7月以降に後ずれしたことが影響している可能性があるが、ボーナス以外の賃金の伸びもそれほど高まっておらず、6月の定期給与(所定内給与+所定外給与)は前年比0.3%にとどまっている。
また、すでに発表されている各機関(日本経団連、日本経済新聞社等)の夏のボーナス調査はいずれも前年よりも増加するとの結果となっているが、増加率はいずれも14年度に比べて大きく鈍化している。さらに、これらの調査はどちらかといえば大企業が中心となっており、伸び率が高めに出る傾向があることには注意が必要だ。中小企業を多く含みカバレッジが広い毎月勤労統計ベースの15年夏のボーナスは小幅な増加にとどまる可能性が高い。
先行きは消費者物価上昇率がマイナスとなることが実質購買力の上昇を通じて個人消費の持ち直しに寄与することが見込まれるが、賃金の伸び悩みが続けば、個人消費の回復がさらに遅れる恐れがあるだろう。

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2015年08月28日「経済・金融フラッシュ」)

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