2015年08月27日

【フィリピンGDP】4-6月期は前年同期比+5.6%~輸出鈍化も政府支出拡大で上昇~

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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フィリピンの2015年4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+5.6%の増加となり、前期の同+5.0%を上回ったものの、市場予想の同+5.7%には届かなかった。輸出は鈍化したものの、政府支出拡大が成長率の上昇に寄与した。しかし、成長率は政府の通年目標である7-8%を大きく下回っており、力強さの乏しい結果であることに変わりはない。

GDPの約7割を占める民間消費は堅調に拡大し、景気の牽引役となっている。資源安と穀物輸入の拡大を背景にインフレ率が低下する一方で賃金が上昇した結果、家計の実質購買力が向上したこと、またGDPの約1割に相当する海外就労者の送金額が堅調に拡大したことが消費の追い風となった。

政府部門の改善も景気を押上げた。1-3月期は政府支出の遅れが景気減速の主因となったが、4月にアキノ大統領が予算執行を迅速化する大統領令を出したことは支出拡大に寄与したと見られる。実際、4-6月の政府の歳出額は前年比+12.5%と1-3月の同+4.5%から上昇しており、特にインフラ向け支出は前年比+37%と前期の同▲11%から急上昇した。また建設部門の粗付加価値額(GVA)を見ると公共部門がプラスに転じており、公共事業の開始が景気の押上げ要因となったことが分かる。なお2015年度予算は前年比+15.1%増であり、政府支出は拡大余地を残している。

先行きのリスクとしては海外経済の減速やエルニーニョ現象の長期化によるインフレリスク、予算執行の遅れなどが挙げられる。景気減速の可能性が高まれば利下げに踏み切る余地はあるが、当面は消費を中心とした堅調な景気が続くと見込まれるほか、不動産投機の懸念が残ることから政策金利は据え置かれるだろう。2016年度予算はインフラ予算が更に拡充されて約3兆ペソ(前年比15.2%増)の大型予算となる予定だ。予算執行が先行きの景気を左右する展開が続きそうだ。


フィリピンの実質GDP成長率(需要側)/建設部門の粗付加価値額(GVA)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2015年08月27日「経済・金融フラッシュ」)

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