2015年07月30日

消費税率引き上げの総決算~景気は想定外の悪化も、企業収益、税収は好調

経済研究部 経済調査室長   斎藤 太郎

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■要旨

2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられてから1年以上が経過し、2014年度の実績値がほぼ出揃った。本稿では消費税率引き上げによる日本経済への影響を、前回の消費税率引き上げ時(1997年度)との比較、事前予想からの乖離という視点を中心に、様々な角度から検証した。

2014年度の実質GDP成長率は▲0.9%と5年ぶりのマイナス成長となり、前回消費税率が引き上げられた1997年度の0.1%を大きく下回った。また、政府、日銀、民間の事前予想からも大きく下振れた。需要項目別には、個人消費が1997年度の前年比▲1.0%に対して、2014年度は同▲3.1%の大幅減少となったことが最も大きな違いである。消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動が前回増税時よりも大きかったことに加え、実質所得の落ち込みが大きかったことが個人消費の悪化をより厳しいものとした。

鉱工業生産は1997年度の前年比1.1%に対し、2014年度は同▲0.4%と前回増税時の伸びを下回った。今回は消費増税直後から企業は生産調整に踏み切ったが、最終需要が想定以上に落ち込んだため在庫の積み上がりが続いた。

2014年度の景気は厳しいものとなったが、こうした中でも企業収益は好調を維持した。その理由としては、円安にもかかわらず輸出数量は伸び悩んだが、契約ベースの価格を維持することで円ベースの収益を確保したこと、国内においても円安によるコスト増を比較的スムーズに最終製品に価格転嫁できたことなどが挙げられる。また、企業収益の好調、株式市場の活況などから2014年度の税収は大幅に増加し、当初予算の見込みからも大きく上振れた。

景気が想定よりも下振れしたにもかかわらず、大幅な税収増を確保したことは、消費税率引き上げの重要な目的である財政再建に向けて一定の成果を上げたという評価はできる。しかし、その一方で消費税率引き上げによって家計部門は想定以上の大きな痛手を受けた。2017年4月に予定されている消費税率の再引き上げに際しては、家計部門への悪影響をいかにして軽微なものにとどめるかが重要な視点と考えられる。

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経済研究部   経済調査室長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2015年07月30日「基礎研レポート」)

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