2015年07月30日

鉱工業生産15年6月~3四半期ぶりの減産、在庫調整が進まず7-9月期も不安

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・4-6月期は3四半期ぶりの減産
・在庫の積み上がりに歯止めがかからず

■要旨

経済産業省が7月30日に公表した鉱工業指数によると、15年6月の鉱工業生産指数は前月比0.8%と2ヵ月ぶりに上昇した。先月時点の予測指数の伸び(前月比1.5%)は下回ったが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.3%、当社予想は同0.1%)を上回る結果となった。出荷指数は前月比0.3%と2ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比1.3%と2ヵ月ぶりに上昇した。
15年4-6月期の生産は前期比▲1.5%(1-3月期:同1.5%)と3四半期ぶりの減少となった。業種別には、在庫調整が続く鉄鋼が前期比▲4.1%(1-3月期:同▲0.7%)と減産幅が拡大したほか、1-3月期に前期比2.1%と4四半期ぶりの増産となった輸送機械が同▲2.3%と再び減少した。また、設備投資の持ち直しを反映し堅調な動きを続けてきたはん用・生産用・業務用機械も前期比▲2.3%と3四半期ぶりの減産となった。

製造工業生産予測指数は、15年7月が前月比0.5%、8月が同2.7%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(6月)、予測修正率(7月)はそれぞれ0.1%、0.0%となり、これまでの生産計画が下方修正される傾向にいったん歯止めがかかる形となっている。
15年6月の生産指数を7,8月の予測指数で先延ばし(9月は横ばいと仮定)すると、15年7-9月期は前期比2.1%となるが、国内需要、輸出ともに足もとで弱めの動きとなっていることからすれば、8月(前月比2.7%)の高い伸びが実現する可能性はそれほど高くない。7-9月期が増産に転じるかは現時点では予断を許さない。
6月の生産は事前予想を上回ったが、出荷の伸びが生産を下回り、その結果在庫指数が高い伸びとなっており、内容は悪い。在庫循環図を確認すると、14年4-6月期に「在庫積み増し局面」から「在庫積み上がり局面」に移行した後、5四半期連続して同じ局面に位置している。出荷指数の伸びが低下を続ける一方、在庫指数は上昇に歯止めがかかっておらず、在庫調整の遅れを示すものとなっている。
97年度の消費増税時と異なり、14年度の増税時には、企業は比較的早い段階で生産調整に踏み切ったが、最終需要が想定以上に弱いことから増税から1年以上が経過しても在庫の積み上がりに歯止めがかかっていない。在庫調整が進展することにより生産の回復が本格化するまでには時間を要するだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2015年07月30日「経済・金融フラッシュ」)

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