2015年06月18日

【6月米FOMC】成長率見通しの下方修正も、年内利上げ開始方針に変更なし

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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【要旨】

金融政策の概要

米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が6月16-17日(現地時間)に開催された。予想通り金融政策の変更はなし。声明文では、前回会合(4月)以降の経済指標を踏まえて景気認識について一部上方修正されたものの、それ以外では大きな変更はなかった。このため、政策金利引上げ時期についての示唆は声明文からは得られなかった。今回の決定は、全会一致の採決となった。
一方、FOMC参加者の見通しは、成長率および失業率の15年見通しが下方修正(失業率は上昇)されたほか、政策金利見通し(中央値)についても16年、17年の水準が引き下げられた。

金融政策の評価

今回のFOMCでは、事前の予想通り政策金利の変更はなかった。FRBは、6月以降のFOMCでは、会合毎に政策金利の引上げ可否を判断するとしており、理屈の上では今回のFOMCでの政策金利変更も可能であった。しかしながら、第1四半期(1-3月期)の成長率がマイナスになるなど、米景気回復に対する不透明感が強まっていることから、今回の利上げは見送られるとの見方が強かった。
もっとも、15年の成長率見通しは引き下げられたものの、主に第1四半期の景気減速が理由で、足元の景気認識については、上方修正されており、景気は第1四半期で底を打ったとの見方が示された。
政策金利引上げ時期については、複数の地区連銀総裁が引上げ開始を来年に先延ばしすべきとの発言をしていたほか、6月上旬に発表されたIMFの年次経済審査報告書でも同様の政策提言がされたことから、FOMCでどのような判断が示されるか注目されていた。イエレン議長は、FOMC参加者間でも景気認識や政策金利引上げ時期の考え方に違いがあることを示した上で、政策金利の引上げ時期は経済指標次第としながらも、依然としてほとんどの参加者が今年中の利上げを見込んでいると述べ、今年中の政策金利引上げに意欲を示した。
さらに、同議長は利上げ開始時期について、過度に重要視すべきではなく、その後の政策金利の引上げペースも含めてみることの重要性に言及した。同議長は、利上げ開始後に金融市場などが不安定化することに対する予防線を張ったとみられる。
米国経済は、第1四半期を底に成長が加速しているとみられるほか、エネルギー価格やドル相場についても安定してきていることを踏まえ、当研究所では9月の利上げ開始を予想している。

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2015年06月18日「経済・金融フラッシュ」)

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