2015年06月09日

5月マネー統計~通貨供給量が急拡大

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■見出し

・貸出動向: 伸び率は僅かに縮小
・マネタリーベース: 巡航速度での積み上げが進む
・マネーストック: 伸び率が急拡大

■要旨

5月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.6%と前月から僅かに縮小した。都銀等の伸びが鈍化し、全体の伸び率鈍化に繋がっているが、前年同月に実行されたM&A資金の反動とのことであり、基調が崩れたわけではなさそうだ。四半期ベースで公表される業種別貸出状況(3月末時点)を見ると、これまで遅れていた製造業の伸び率に改善が見られ、円安効果が資金需要の面で一部現れてきた可能性がある。なお、3月の新規貸出金利については、長期(1年以上)が0.826%に低下し、過去最低を更新している。

日銀による資金供給量を示すマネタリーベースの5月平均残高は304.3兆円、前年比で35.6%の増加となった。前年比での伸び率は前月からやや拡大している。日銀券(紙幣)発行残高の伸び率が高い伸びを示したほか、日銀当座預金の伸び率も前月を若干上回ったためである。現行の金融政策目標におけるマネタリーベース増加ペースは単純計算で月当たり6.7兆円増だが、季節調整踏みのマネタリーベース平均残高は1-5月平均で見ると月7.0兆円の増加となっており、これまでのところは金融政策に沿ったペースでの拡大が続いている。

5月のマネーストック統計によると、市中通貨量の代表的指標であるM2平均残高の伸び率は前年比4.0%、M3は同3.3%と、それぞれ前月から大きく拡大した。資金流出要因となる貿易赤字の縮小、予算成立遅れに伴う社会保障費支払いのずれ込み、株価上昇に伴う個人投資家の株式売却などがプラスに働いたとのこと。リスク性資産等を含めた広義流動性 の伸び率も前年比4.3%と拡大、M3を上回る伸び率を示している。投資信託や金銭の信託が寄与した。今回の伸び率は大きく拡大したが、一時的とみられる要因も含まれているだけに、実勢は今後のデータを見極める必要がある。

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2015年06月09日「経済・金融フラッシュ」)

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