コラム
2015年05月19日

散髪と資産運用

金融研究部 研究員   前山 裕亮

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筆者は1-2カ月に1回の頻度で髪を切ります。普段、割安なチェーン店に行くため対応してもらう理容師は毎回異なります。偶然、同じ方に対応してもらう場合でも、前回のことはまず覚えていないでしょう。そのため、「前回と同じに」といった無難にお願いすることができません。毎回、「短めに」などと曖昧にお願いし、あとは担当してもらう理容師に任せてしまいます。

他に「●cmくらい切ってください」とお願いすることもできます。このようにお願いすると、確実に伝えた長さを切ってくれます。しかし、だからといって頭の中で描いている出来上がりになるかは別問題です。●cm切ったらどのような頭になるのか容易にイメージすることができないためです。
   当然、思い通り行かなかった場合は再度お願いすることができます。ただ、軌道修正ができるのは予想以上に長かった場合のみです。予想以上に短かった場合には、その場ではどうすることもできません。ちなみに筆者の場合、短髪のためどのような出来上がりでも1カ月もすれば大概同じような髪の長さに戻ります。そのため出来上がりを気にすることはほとんどありません。

さて、夏のボーナスの時期を迎え、ボーナスを原資に資産運用を始める、または運用額を増やそうと考えている方もいるのではないでしょうか。現在の定期預金の利率を見るとほぼ0%。もう少し高いリターンを欲しくなります。しかし、定期預金よりも高いリターンが期待できる金融商品にはそれ相応のリスクがもれなくついてきます。

そこで自分に合う資産運用を行うためには、金融商品が抱えているリスクを把握する必要があります。最近は「リスク●%程度の運用を目指します」と宣言している商品もあります。一般的にリスクの数値を明記する場合には、数値は年間リターン(収益率)の標準偏差を意味しています。リターンが正規分布に従っていると仮定すると、リスク(標準偏差)の2倍程度が今後1年間に起こる可能性がある最大の下落幅の目安になります。仮にリスク(標準偏差)が10%程度と明記している金融商品の場合、少なくとも1年の間に20%の下落までは覚悟した上で投資したほうが良いと思われま。

金融商品のリスクを理解する上でこの様な定量的な情報は参考になりますが、目安の数値が分かってもその数値からリスクを実際にイメージすることは困難なのではないでしょうか。髪の毛の切る長さが分かったとしても、実際に切られた後のイメージが漠然としか出来ないのと同じです。やはり金融商品のリスクを理解できるのは、散髪の失敗が散髪終了後に分かるように、実際に下落を体感した際ではないでしょうか。膨らんだ損失額を目の当たりにし、予想以上の精神的ダメージを受けて初めてリスクを取りすぎていたことに気づかされることはよくある話です。

多くの方が初めての理容師または美容師に対しては、やり直しがきかないため丁寧にお願いすると思います。資産運用についても、後悔しないためには初めは慎重に行うべきなのではないでしょうか。経験が蓄積され、自身の損失耐久度や投資する金融商品のリスクの理解を深めるまでは、1カ月でリカバーする筆者の頭ではないですが、損失を出しても直ぐに補える金額内で手堅く投資することをお勧めします。

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金融研究部   研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
運用手法開発(国内株式)

(2015年05月19日「研究員の眼」)

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