2015年05月12日

海外資金の国内不動産取得動向・2014年-投資市場の活況がリーマンショック前のピークに迫る

基礎研REPORT(冊子版) 2015年5月号

金融研究部 主任研究員   増宮 守

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1―拡大が続く国内不動産取引

2014年の国内不動産取引は非常に活発であった。J-REITによる物件取得を除いた不動産取引額は、前年比で約7割増加し、約3.7兆円となった。これは、リーマンショック後に停滞した2009年の倍以上であり、ファンドブームといわれたリーマンショック前の2007年に匹敵する高い水準である[図表1]。
   2013年も不動産取引は大幅に拡大していたが、そのほとんどはJ-REITの取得増加によるものであった。J-REITによる物件取得は、内部取引ともいえるスポンサー企業からの取得が多い。そのため、2013年の取引拡大は、必ずしも活発な市場取引を反映したものとはいえなかった。一方、2014年については、仲介会社による媒介や入札などの開かれた投資市場が活況を呈し、リーマンショック前の2007年の状況に近づいたといえる。



 

2―海外資金による物件取得

様々な投資主体のなかでも、海外資金は大きな市場変動の原動力になることが多く、その動向は特に重要である。J-REIT以外の物件取得が拡大した2014年には、海外資金による取得額も前年比で約3割拡大していた[図表2]。しかし、ファンドブームともいわれたリーマンショック前の2007年と比べると、依然として約半分の水準に止まっており、当時の投資市場の活況には遠く及ばないようにみえる。
   そこで、海外資金による物件取得額をセクター毎に区分し、2007年と2014年とを比較した。



 

(1)ホテルセクター

2007年と2014年の差が最も顕著にみられたのはホテルセクターであり、2014年の取得額が、2007年の5分の1程度に止まっている[図表3]。
   しかし、2007年を振り返ると、大手航空会社が大規模なホテル事業のリストラを実施し、海外資金が受け皿となる事例が重なっていた。そのため、非常に高水準であった2007年の海外資金によるホテル取得額は、例外的な数字とみることができる。
   現在、2007年のように大規模な取引はみられないものの、大幅な訪日外客数の増加や、シニア世代による観光の活発化などが支え、ホテルの客室稼働率はかつてない高さを保っている。今後も、2020年の東京オリンピック開催を控えて訪日外客数増加が見込まれ、投資セクターとしても幅広い投資家から注目を集めている。海外資金による取得額は2007年に及ばないものの、ホテル投資市場は非常に活発といえる。




 

(2)オフィス、住宅セクター

ホテルセクターと大きく異なり、オフィス、住宅セクターでは、海外資金による2014年の取得額が、既に2007年の水準に近づいている[図表4・5]。
   特に、オフィスセクターの2014年の伸びは大きく、前年比で約7割増加し、約5,000億円(約46億ドル)に達した。2014年には全セクターで約2,000億円の増加となったが、オフィスセクターだけでほぼ同額の増加がみられた。




 

3―海外資金動向の今後の見通し

(1)不動産市場サイクル

オフィス、住宅セクターでは、多数の投資家が参加する比較的成熟度の高い投資市場が形成され、景気動向と連動した従来型の不動産市場サイクルがみられる。これらのセクターでは、ファンドブームといわれたリーマンショック前の状況が再現されつつあり、当面、投資市場の活況は続くと予想される。
   ただし、今後の不動産取引がさらに大幅に拡大するかについては、意見が分かれる。既に、不動産取引額は2007年の水準に近く、不動産市場サイクルのピークが近いとの見方が増えている。実際、弊社が不動産市場関係者に実施した市況アンケートでは、今後の不動産価格のピーク時期を2016~17年と予想する回答が過半数を占め、現在とする回答も4分の1に及んだ[図表6]。2020年の東京オリンピック開催は、最近の不動産価格上昇の主な要因といえるが、実際の開催まで数年を残し、不動産価格がピークを打つと予想する回答がほとんどであった。
   実体経済に力強さが感じられないなか、特に国内の長期志向の投資家に慎重な姿勢がみられる。賃料上昇を大きく上回る価格上昇には過熱感があり、現在の低い利回りでは物件取得の説明が難しいとする見方が少なくない。
   一方、海外からみると、日本の不動産価格の上昇は円安によってかなり相殺されている。2015年に入ってからも、CIC(中国投資有限責任公司)による目黒雅叙園の取得(約1,400億円)や、フォートレスによる複数のホテルや高齢者施設の取得など、海外資金の動きは積極的である。今後、海外資金による積極的な物件取得の継続が、不動産市場サイクルのピークまでの期間や価格上昇余地を引きのばす可能性がある。



 

(2)アジア、米国資金の取得動向

海外資金による物件取得額を国別で区分してみると、やはりアジアの資金による物件取得拡大が目立つ[図表7]。今後も各国の年金基金などは拡大が続くとみられ、既に海外資金の半分近くを占めるアジアの資金は、日本の投資市場にとって欠かせない牽引役といえる。
   一方、依然一国として最大のシェアを占める米国の資金については、2014年の取得額が2007年の3割程度に止まっており、今後の拡大余地は大きい[図表8]。
   米国金利の上昇に際し、投資資金の引き揚げが懸念されるエマージング市場と異なり、しばらく米国資金の流入が低迷していた日本では、米国景気とリスク許容度の拡大による資金流入が期待できる。



 

(3)地方都市での物件取得

また、海外資金による物件取得額を立地によって東京とその他に区分し、2007年と2014年を比較した。都内立地が少ない物流施設の取得が拡大した2011、12年には、東京の占める比率がやや低くなったものの、最近では、再び都内での取得が増加し、2014年の東京の比率は2007年より約2割高い水準となった[図表9]。
   2007年には、地方都市のショッピングモールなどが積極的に取得されていたが、今のところ、そのような地方都市での取得増加は目立っていない。不動産投資の東京への集中は、人口動態を背景とした構造的変化でもあるため、2007年の状況の再現性は慎重にみる必要がある。しかし、今後さらにリスク許容度が高まれば、地方都市での取得余地を埋める形で、海外資金による物件取得が拡大する可能性も考えられる。



 

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金融研究部   主任研究員

増宮 守 (ますみや まもる)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

(2015年05月12日「基礎研REPORT(冊子版)」)

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