2015年04月13日

3月マネー統計~貸出市場でも存在感を高める日銀

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■見出し

・貸出動向: 伸び率は小幅に拡大
・マネタリーベース: 順調に拡大中
・マネーストック: 投資信託の勢いが際立つ

■要旨

3月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.7%と前月(2.6%)から小幅に拡大した。引き続き、M&A資金や不動産向けなどが好調であったとみられるほか、前年比で見た円安ドル高幅の拡大によって、外貨建て貸出の円換算額が押し上げられたことも寄与した。銀行貸出は、増勢が明確に強まっているわけではないとはいえ、緩やかな増加が継続しているが、日銀の影響も見逃せない。日銀は「貸出支援基金」として、2種類の条件を満たした金融機関に対して資金供給を行っているが、両資金供給額の伸びは1年間で15兆円に達する。この低利・長期固定マネーが貸出増加に寄与しているとみられ、マーケット同様、貸出市場でも日銀の存在感が強まっている。

日銀による資金供給量を示すマネタリーベースの3月平均残高の伸び率は前年比35.2%と前月から縮小した。伸び率縮小は3ヵ月連続となっているが、比較対象となる前年のマネタリーベースが増加した影響が大きく、この間の前年差(金額)は安定して推移していることから、増勢が鈍化しているわけではない。現行の金融政策目標におけるマネタリーベース増加ペースは単純計算で月当たり6.7兆円増だが、季節調整踏みのマネタリーベース平均残高は1-3月において月平均7.2兆円の増加となっており、今のところは金融政策に沿った順調なペースでの拡大が続いている。

3月のマネーストック統計によると、市中通貨量の代表的指標であるM2平均残高の伸び率は前年比3.6%、M3は同3.0%と、それぞれ小幅ながら前月から伸び率が拡大した。ともに伸び率拡大は2ヵ月連続であり、伸び率の水準は1年1ヵ月ぶりの高水準となる。一方、M3に投信や外債といったリスク性資産等を含めた広義流動性の伸び率は前年比3.3%と小幅に縮小。投資信託(元本ベース)の伸び率は引き続き拡大したものの、国債の減少幅が拡大したほか、外債、金銭の信託の伸び率鈍化が響いた。結果的に、リスク性資産の中で投資信託の伸び率拡大が目立つ結果になっている。

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2015年04月13日「経済・金融フラッシュ」)

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