2015年04月10日

NISAの現状と今後の課題-利用拡大に欠かせない金融機関からの情報提供の充実

生活研究部 シニアマーケティングリサーチャー   井上 智紀

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■要約

本稿では、NISAの利用者像や家計のポートフォリオへの影響を確認するとともに、今後活用を促進していくために求められる取り組みについて示唆を得ることを目的として口座開設後の活用を阻む要因を明らかにすることを試みた。

分析の結果、明らかになった点は主に以下の4点である。

  • 現在のところ、NISA利用者は男性や高齢層に偏っているだけでなく、職業別では公務員や無職の者が中心となっている
  • 年間の累積投資額は、属性によらず上限の100万円が最も多く、貯蓄・投資総額に占める割合では4割弱が貯蓄・投資総額の5割以上をNISAに振り向けている
  • この1年間の新規・買増経験および今後の意向では、利用者や利用意向者ではそれぞれリスク商品の新規・買増経験や今後の購入意向が高くなっているのに対し、利用意向がない者や態度を保留している者では、そもそもリスク商品の保有経験がなく、今後のリスク商品の利用意向も低い
  • 金融意識の面では、利用者は総じて金融リテラシーが高く、リスク選好的でありながら、より一層の金融リテラシー向上や専門家の助言に対して、依然として高いニーズを抱いている

このように、個人投資家のすそ野の拡大という制度導入の目的に対し、現時点では、一部ですそ野が拡大している可能性が窺えたものの、もともと個人投資家であった者が中心であること、利用意向がない者ではそもそもリスク商品の保有経験がなく、今後の保有意向も低いことから、現状では個人投資家を大幅に増やすことは極めて困難であると思われる。

もう一つの目的である経済成長に必要な成長資金の供給拡大という点については、今後、未運用者や利用意向者の資金が市場に流入していくことを鑑みれば、少なからず供給拡大にはつながるものと思われる。

これらのことから、NISAの今後の利用拡大に向けては、利用者のすそ野を拡げる方策よりも、現状の利用者に対して投資の拡大を促す方が、より有効であると考えられる。

今後の確実な普及や利用拡大に向けては、NISAやリスク商品購入のメリット・デメリットについて正しい理解を促すなど、消費者の金融リテラシー向上に向けた情報提供の拡充も欠かせまい。今年1月より口座金融機関の柔軟な変更が可能になったことを鑑みれば、消費者に向けた情報提供のあり方は、顧客の獲得や維持の点でも、さらに重要性を増しているといえよう。

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生活研究部   シニアマーケティングリサーチャー

井上 智紀 (いのうえ ともき)

研究・専門分野
消費者行動、金融マーケティング、ダイレクトマーケティング、少子高齢社会、社会保障

(2015年04月10日「基礎研レポート」)

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