2015年04月07日

アベノミクスと日銀の金融緩和が株価を押し上げた効果の考察

基礎研REPORT(冊子版) 2015年4月号

金融研究部 チーフ株式ストラテジスト・年金総合リサーチセンター兼任   井出 真吾

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日経平均株価が2万円目前まで回復した。野田前首相の衆議院解散発言から2年あまり、株価を2倍以上に引き上げた最大の要因はアベノミクスと日銀の金融緩和と言ってよいだろう。これら2つの立役者がもたらした効果を検証し、更なる株価上昇の必要条件を考察する。

1――企業業績と市場心理の両方とも改善

3月13日、日経平均株価の終値は19,254円となり、終値ベースでは2000年4月以来およそ15年ぶりの高値を回復した。野田佳彦前首相が衆議院解散を明言した2012年11月14日の終値8,665円からの値上がり幅は10,590円で、2年4ヶ月で株価は2倍以上になった。
   株価が大きく上昇したのは企業業績と市場心理の両方が改善したためだ。業績改善の背景には個別企業の努力もあるが、何といっても円安の進行(超円高の是正)や国内外の景気回復によるところが大きいだろう。企業業績の改善度を日経平均ベースの1株あたり利益で見ると、12年11月14日の647円から直近の1,082円まで約67%の増益となった[図表1]。
   一方、市場心理をPER(株価収益率)で測ると日経平均ベースでは13.4倍から17.8倍に増大した。市場心理が改善した背景として忘れてならないのは日銀の金融緩和だ。特に、年間3兆円にのぼるETF(上場投資信託)の買入れは、投資家に安心感を与えるため株式が買われやすくなる。
   値上がり幅10,590円を企業業績と市場心理それぞれがもたらした効果に分解すると、企業業績の改善効果(図のオレンジ部分が右方向に拡大した分)が7,107円で約7割を占めるが、市場心理の改善効果(図の黄色部分が上方向に拡大した分)も3,483円に及ぶ。この分は“日銀効果”と言ってよいだろう。



 

2――これ以上は期待薄の“日銀効果”

気掛かりなのはPERが17.8倍まで上昇した点だ。PERは市場心理とともに株価の割高・割安を測る代表的な指標だ。高いほど割高を意味し、歴史的には14~16倍が適正水準と考えられる。
   もっとも、「今後の業績改善を株価が先取りしている」という説明で16倍超のPERを正当化することもできるが、それでも現在の17.8倍という水準に割安さは感じられない。これ以上の“日銀効果”を期待するのは無理があるだけでなく、何か悪いニュースに大きく反応しやすい状況と注意すべきだろう。
   もちろん、PERなど気にせず株価がどんどん上がっていく可能性を完全に否定することはできない。しかし、実力(企業業績)から大きくかい離して株価が高くなり過ぎれば、遠からず値下がりすることは歴史が証明している。もちろん、PERなど気にせず株価がどんどん上がっていく可能性を完全に否定することはできない。しかし、実力(企業業績)から大きくかい離して株価が高くなり過ぎれば、遠からず値下がりすることは歴史が証明している。

 

3――業績拡大を続けられるか、“アベノミクス効果”の真価が問われる

今後、健全な形で株価が上昇するためには、企業業績の継続的な改善が必要条件となる。つまり、図のオレンジ部分を右方向に拡大できるかがカギだ。
   目先は、13・14年度に続けて15年度も大幅な業績改善が期待できよう。その結果として日経平均は2万円くらいまでの上昇は十分に期待できる。これには配当や自社株買いなど株主還元の拡充、成長投資、賃上げなど企業側の努力もあるが、円安による利益のかさ上げが大きく作用していることも否定できまい。
   問題はその先だ。極端な円高に戻ることは当面ないとみて、海外の生産拠点を国内に戻すなど円安メリットを享受するために事業構造を見直す動きも増えているようだ。しかし、どこまでも円安が進むとは考えにくいし、企業が為替レートをコントロールすることも不可能だ。
   結局のところ、外部環境に頼らない真の収益力強化が求められ、それには新たな需要を創造したりビジネスチャンスを生み出すための政官民一体となった取り組みが欠かせない。今後は“日銀効果”ではなく、“アベノミクス効果”の真価が問われよう。

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金融研究部   チーフ株式ストラテジスト・年金総合リサーチセンター兼任

井出 真吾 (いで しんご)

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株式市場・株式投資

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