コラム
2015年03月31日

「価値観の共有」困難な時代-グローバル社会に求められる“大人の関係”

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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結婚相手を選ぶときに重視する条件とは何だろう。民間のネット調査などでは、『価値観が合う』が最も多い。結婚して幸せな共同生活を営む上で、お互いの価値観を共有することが大切だからだろう。同様に、地球上で多くの国が幸せに暮らすためには、国家間でお互いの価値観を共有することが必要かもしれない。しかし、各国には独自の歴史や文化があり、それはなかなか容易なことではない。

先日、外務省ホームページにおける韓国との二国間関係に関する記述が変更され、話題になった。『韓国は我が国と、自由と民主主義、市場経済等の基本的価値を共有する重要な隣国』という従来の記述から『基本的価値を共有する』という文言が削除され、『韓国は、我が国にとって最も重要な隣国』という表現に変わったというのである。

国家間で共有される基本的価値とは何だろう。一般的には自由や人権に対する考え方、民主主義や市場経済といった国の社会・政治・経済システムが一致することを意味するのだろうか。しかし、国によって国益の捉え方や外交方針は異なり、安全保障政策や通商政策など様々な重要政策については、「違い」があることは、ある意味当然のことだろう。また、社会が成熟すると、国民の価値観も多様になり、国家レベルでの価値観の共有が、必ずしも個人レベルで成立するとは限らない。

近年、世界各地で宗派や民族間の対立による紛争やテロ事件が多発しており、それは基本的価値観の「違い」によるところが大きい。しかし、国家間で価値観が共有できない場合も、「違い」は「違い」として認めた上での付き合いが必要になる。外交関係で“大人の関係”という表現をよく聞くが、それは二国間の価値観の「違い」を理解しながら、その「違い」を相互に尊重し合う関係を意味するのだろう。

社会が多様化すると、これまで共通の価値観を持っていると思われた国の間でも、価値観の「違い」が顕在化することがある。外務省ホームページに記載されているドイツとの二国間関係には、『日本とドイツは基本的価値を共有し、・・・』と書かれているが、原発廃止を明確に打ち出したドイツが、日本と「基本的価値を共有している」と考えているかどうかはわからない。

我々は、従来以上に「価値観の共有」が困難な時代を迎えている。価値観が多様化する現代社会では、価値観のグローバル・スタンダードなど存在するのだろうか。むしろ、お互いに価値観が異なることを前提に「異なる価値観」を理解し合い、「自らの価値観」を理解してもらう努力が必要だ。今日、国家や個人にとって、「異なる価値観」に対する寛容性を持った“大人の関係”がますます重要になっている。




 

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2015年03月31日「研究員の眼」)

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