2015年02月27日

消費者物価(全国15年1月)~コアCPIのマイナス転化近づく

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・コアCPI上昇率(消費税の影響を除く)は0.2%まで低下
・エネルギーの下落幅は15年度入り後さらに拡大
・コアCPI上昇率は15年度入り後にはいったんマイナスへ


■要旨

総務省が2月27日に公表した消費者物価指数によると、15年1月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比2.2%(12月:同2.5%)となり、上昇率は前月から0.3ポイント縮小した。コアCPIを消費税の影響を除くベースでみると、14年4月は消費税率引き上げ分以上の値上げが行われたこともあり、前年比1.5%まで上昇率が高まったが、その後は鈍化傾向が続き、15年1月は前年比0.2%となった。
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.32%(12月:▲0.01%)、食料(生鮮食品を除く)が0.23%(12月:0.23%)、その他が0.28%(12月:0.28%)であった(当研究所試算による消費税の影響を除くベース)。

原油価格(ドバイ)は1月の1バレル=40ドル台を底に50ドル台後半まで持ち直しており、ガソリン、灯油の店頭価格も2月に入り上昇に転じている。しかし、15年4月には消費税率引き上げの影響が一巡するため、当面は前年比で二桁の下落が続くことが見込まれる。
また、電気代、ガス代は燃料費調整が市場価格に遅れて反映されるため、電気代は3月まで、ガス代は4月まで値上げが続くものの、その後は原油価格の大幅下落が反映されることにより上昇率が徐々に鈍化し、15年夏までには前年比でマイナスとなるだろう。コアCPI上昇率に対するエネルギーの寄与度(消費税の影響を除く)は15年1月の▲0.32%から15 年夏頃にかけてマイナス幅が▲1%近くまで拡大する可能性が高い。

食料品を中心に円安によるコスト増を価格転嫁する動きが一部に見られるものの、エネルギー価格下落の影響がそれを大きく上回ること、需給要因による物価押し上げは当面期待できないことから、コアCPI上昇率(消費税の影響を除く)は鈍化傾向が続くことが見込まれる。当研究所では原油価格(ドバイ)が15年末にかけて1バレル=60ドル台後半まで持ち直すことを想定しているが、コアCPI上昇率は15年度入り後にはいったんマイナスとなる公算が大きい。
一方、物価上昇がある程度継続してきたことなどから、かつてに比べて企業の値上げに対する抵抗感は小さくなっているため、原油価格上昇によって原材料価格が上昇した場合には、比較的スムーズな価格転嫁が行われる可能性が高い。また、景気は消費増税後の落ち込みから持ち直しつつあり、先行きは原油安を追い風として回復基調を強めることが予想される。現時点では、コアCPI上昇率のマイナスが長期化するリスクは低く、原油価格の上昇に需給バランスの改善が加わることで、15年末までには再びプラス圏に浮上すると予想している。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2015年02月27日「経済・金融フラッシュ」)

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