2014年12月26日

米国「労働市場の緩み」の点検-FRBが政策金利を引き上げられる程、労働市場は改善したのか

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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■要旨

米国の中央銀行であるFRBは、金融政策における政策目標として、多くの中央銀行が掲げる「物価の安定」に加えて、「雇用の最大化」を明示していることに特徴がある。FRBは、労働市場における失業のうち、景気悪化に伴う労働需要の減少、すなわち「労働市場の緩み」が原因で生じる循環的失業の最小化を「物価の安定」を損なわない範囲で目指している。

現在、FRBが「雇用の最大化」と考えている失業率の水準は、足元の失業率を下回っており、FRBは依然として「労働市場の緩み」が存在すると考えている。

もっとも、FRBも認めるように、労働市場の緩みの評価手法は確立されておらず、様々な指標から総合的に判断する必要性がある。とくに、リーマン・ショックという大きなストレスがかかった後では、労働市場の緩みの見極めは一層難しくなっている。

労働市場において代表的な指標である、非農業部門雇用者数や通常の失業率はリーマン・ショック前の水準まで改善したことを示しているが、他の様々な指標は、それほど労働市場の回復が進んでいない状況を示している。

実際、広範な労働市場を捕捉する広義の失業率は、通常の失業率ほど、労働市場が改善していないことを示唆しているほか、失業者を仔細にみると長期失業者の水準が過去との比較でも非常に高い水準に留まっていることを示している。とくに長期失業者の減少には今暫く時間がかかるとみられる。

エネルギー価格の下落に伴い、物価上昇圧力が限定的なため、「物価の安定」の観点からは政策金利の引き上げを急ぐ理由もないことから、FRBは労働市場の回復を慎重に見極めて判断すると考える。

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

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