コラム
2014年12月15日

LGBTと人権意識-「違い」を「差別」にしないために

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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1948年12月10日、国連は世界人権宣言を採択した。日本でもそれを記念して毎年12月4日から10日までの1週間を「人権週間」と位置づけている。66回目となる今回の重点目標は『みんなで築こう人権の世紀~考えよう相手の気持ち 育てよう思いやりの心』だ。今年度の啓発活動強調事項の中には、「性的指向を理由とする差別」や「性同一性障害を理由とする差別」をなくすことも掲げられている。

最近、性的マイノリティであるLGBT(レズビアン、ゲイ、両性愛者、トランスジェンダー)などに関する話題をよく耳にする。特に2010年以降、同性婚を合法化する世界の動きは加速しつつある。ヨーロッパでは、既にオランダ、フランス、ベルギーなど、10か国で同性婚が法的に認められている。アメリカでは大統領選挙の重要な争点のひとつにもなったが、これまでに18の州で容認されている。

LGBTは政治的課題としてだけでなく、企業の間でも、有能な人材確保のためのダイバーシティ施策として強い関心を集めている。また、今年10月にはアップルのティム・クックCEOが同性愛者であることを公表して大きな反響を呼んだが、同性愛カップルの中には、高学歴・高収入の人も多く、経済的な存在感も増している。

他方、伝統的な家族観や宗教上の観点から同性婚に対して否定的な考えが根強く残っていることも事実だ。日本では、憲法上「婚姻は両性の合意によって成立する」として、同性婚は認められていない。また、多様な「性」への理解はあまり進んでおらず、LGBTの人たちは就職活動においても苦労している。ただ、最近の新聞記事*によると、外資系企業を中心に就活支援を行う企業なども現れている。

社会にはさまざまな「違い」が存在する。その「違い」を認め、相互に尊重することが多様性を実現することにつながる。しかし、「違い」を理由に偏見に基づいた心理的、経済的、社会的不平等や不利益を強いることは「差別」になる。「違い」を「差別」にしないためにはどうすればよいのだろう。

「差別」はたとえその認識が無くても、常に受ける側から捉えることが原則だ。「人種差別」や「男女差別」に比較すると、LGBTという性的指向による「違い」は実態が見えにくく、無意識のうちに「差別」が生じる可能性がある。まずは、「違い」を客観的に認識することが重要ではないだろうか。

民主主義は、多数派による意思決定にとどまらず、少数派を切り捨てずに多様できめ細かな対応を可能にするシステムだ。人権尊重は少数派だけの問題ではない。LGBTという性的マイノリティに対する鋭い人権意識を醸成することは、誰もが暮らしやすい社会を創ることに他ならないのである。




 
 日本経済新聞『LGBT就活、支援の輪』(2014年11月25日、朝刊)

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

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