2014年12月09日

欧州経済見通し~ユーロ圏:強まるデフレ懸念。政策対応を強化/英国:GDPギャップ解消へ~

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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  1. 2014年のユーロ圏の実質GDPは0.8%と3年振りにプラス成長に転じる見通しだが、GDPギャップの縮小は殆ど進まず、デフレ懸念が強まった。15年入り後もしばらくは原油価格下落のため超低インフレが続き、インフレ期待の下振れが心配される。
  2. 15年は、ECBによる金融緩和の強化とこれに伴うユーロ安、EUの投資プロジェクトの始動、財政緊縮圧力の緩和、さらに最大の輸出相手国である米国経済の回復などから、実質GDPは前年比1.1%、16年は同1.6%に回復し、GDPギャップは徐々に縮小する。
  3. 2015年のインフレ率は平均1バレル=75ドル程度の原油価格が続くと想定した場合、年間で0.4%まで低下するが、16年はその反動とGDPギャップの縮小で1.6%まで回復しよう。
  4. 英国は内需主導で回復しているが、インフレ率は輸入物価の影響で鈍化しており、実質賃金のプラス転化が視野に入ってきた。15年の成長率は14年の3%を下回るものの、潜在成長率を上回り、GDPギャップの解消が見込まれる。BOEは7~9月期に利上げを開始、5月総選挙は二大政党離れ、EU離脱問題で市場の関心を集めよう。

長期化する超低インフレ~本来プラス要因の原油価格低下もインフレ期待への影響が懸念~

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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴
  • ・ 1987年 日本興業銀行入行
    ・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
    ・ 2023年7月から現職

    ・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
    ・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
    ・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
    ・ 2017年度~ 日本EU学会理事
    ・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
    ・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
               「欧州政策パネル」メンバー
    ・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
    ・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
    ・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

(2014年12月09日「Weekly エコノミスト・レター」)

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