コラム
2014年11月28日

米国移民法を巡る政治的混乱-移民法改正を巡って、野党共和党とオバマ大統領の対立が激化

経済研究部 主任研究員   窪谷 浩

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米国では、移民法の扱いを巡って、野党共和党とオバマ大統領の間で対立が激化している。オバマ大統領は11月20日に国民向けの演説を行い、大統領令による移民制度の大規模な改革を発表した。大統領令を行使した背景には、民主党が過半数の議席を有していた上院で昨年6月に改正法案が通過したにも係わらず、共和党が多数派を占める下院では、現在まで500日以上に亘って同法案が棚ざらしにされたことがある。なお、上院の採決では08年の大統領選挙で共和党の大統領候補であったジョン・マケイン議員も賛成するなど、超党派での賛同を得ていた。
   米国では、法案を成立させるためには上下両院で法案を通す必要があり、大統領は下院での速やかな採決を求めていたが、下院は要求を無視していた。このため、大統領は、移民制度改革を前進させるための暫定的な措置として、概ね上院の改正案に沿う形での行政命令を行い、恒久的な法案を議会で速やかに審議するよう求めた。
   20日の大統領令の内容を簡単に記すと、不法移民の進入を防ぐための国境警備の強化や、高度熟練技術者や企業家の移住を迅速に行うための改正がされたほか、以下の条件を全て満たす場合に不法移民に対して3年間は強制退去の免除と労働許可を認める救済内容になっている。
   (1)米国に5年以上滞在していること
   (2)子どもが米国市民、または合法的な居住者であること
   (3)犯罪履歴のチェックを通過すること
   (4)税金を支払うこと

今回の救済措置では、市民権は付与されず、米国民と同様の社会保障は提供されない。現在、米国内で生活する不法移民は1,100万人程度と言われているが、3年間の救済措置に該当するのは、そのおよそ半分弱にあたる400万人程度となる見通しである。
   オバマ大統領は、演説で1,100万人に上る不法移民を全て強制送還することは現実的ではないと主張したほか、米国の市民権を持つ子どもの両親が強制退去させられることで家族が離散してしまう問題にも言及して支持を訴えた。併せて、最近不法入国した移民や将来不法入国する移民に対しては救済措置を適用しないことも強調した。かつて共和党のレーガン氏や前大統領のブッシュ氏も同様の救済措置を行っている。
   また、移民制度を巡っては、両党で様々な議論はあるものの、不法移民を雇っている企業が、そうでない企業に比べ、社会保障費を含めた労働コスト面で競争上優位になるなど、現在の制度に欠陥があるとの点では両党の認識は一致している。
   しかし、今回オバマ氏が、共和党が勝利した中間選挙後に大統領令を強行したことで、同党は職権乱用として猛烈に反発しており、大統領と議会の対立が先鋭化することが不可避な状況となりつつある。当面予定されている重要法案としては12月11日に期限を迎える暫定予算が延長されるかどうか注目である。11日までに議会と大統領の間の溝が埋まらない場合には、最悪の場合、13年10月に起こった政府機関の閉鎖という悪夢が繰り返される可能性もある。
   米国は経済面では労働市場をはじめ回復基調が継続しているが、政治面では外交・安全保障をはじめ問題が山積しており、政治的な混乱が米国経済をはじめ世界経済に与える影響が懸念される。

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

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