コラム
2014年11月25日

実感する外国人観光客増~東海道新幹線での出来事から~

加藤 えり子

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11月中旬に名古屋方面に出張の機会を得て東海道新幹線で往復した。行き帰りとも隣りは欧米系の外国人で、海外からの観光客増加を実感。折しも2014年の入込客数が最速で1,100万人に到達したとのニュースが発せられたタイミングだった。

行きの隣人はアメリカのノースカロライナ州から来日して4ヶ月目の20~30代女性で、1年間滞在の予定で英語教師をしているとのこと。京都に3泊、余裕があれば大阪にも寄る予定でノートには行先候補が多数ピックアップされていた。清水寺は必須との認識はあるもののガイドブックは持っておらず、ネット情報のみでプランを立てていた。帰りは京都・奈良を堪能してきたフランス人のご夫婦で、こちらはフランス語と英語のガイドブックを1冊ずつ持ち旅先の余韻を楽しんでいた。特に奈良に感銘したとのこと。さらに車両内は、その前半分を欧米系の外国人が占め、添乗員らしき人物も同乗、何かを説明する様子は日本でも馴染みのある団体ツアーの光景だった。

日本政府観光局(JNTO)は訪日外客数を毎月発表しており、最近は2013年3月から20ヶ月連続で前年同月比プラス、冒頭に書いたように10月末で1月からの訪日外客数が1,100万人を突破し過去最速の増加ペースとなった。毎月のリリース資料では人数、増減割合のほかに増減要因も記載しており、「東南アジア諸国のビザ発行要件の緩和」「航空便の増便」「大型クルーズ船の寄港」などとなっていた。そして意外な気もするが11月のリリースでようやく「円安による割安感の浸透」という記述が登場した。10月は例年訪日旅行者が多いとはあるが、おそらくこの欧米系外国人が車両内で多数を占める光景は、円安の効果によるところが大きいのではないだろうか。

フランス人夫婦の会話を聞くともなく耳に入ってきた「TGV」、お二人はフランス南西部のトゥールーズから来ているとのことなので、高速列車比較などしていたのかも知れない。先の米国人女性もそうだが、主要都市から離れた地域からも円安効果で来日しやすくなっているのではないだろうか。

別件のために帰りは「ひかり」を利用し小田原で下車したところ、先ほどの団体外人客とそれに加えて他の車両からも含め多くの欧米系外国人が下車した。彼らが向かう先は小田急線/箱根登山鉄道方面で、どうやら箱根に向かう様子。欧米からの個人客が多数そちらを目指すところを見ると、小田原から箱根のルートはかなり浸透していると思われた。

訪日外客数最速1,100万人のニュースが各局で報じられたのと併せ、外人観光客の増加を実感した。円安は継続するのか、円安が続くことが国内経済にとってプラスなのかは難しい問題だが、円安をきっかけにした来日を経て、為替レートが変わってもまた日本に行きたいと思っていただくことが理想ではないだろうか。そのための課題として、言語の問題やホテル不足などが指摘されている。ホテルについては、複合開発で高級ホテルを組み込むケースは東京や主要都市で多く見られるが、ビジネスホテルについても増加の兆しが見える。大阪では都心の築古オフィスがマンションに建替えられるケースが多かったが、最近はホテルに建替えられるようになったとのこと、名古屋でもホテルへの建替えはいくつか見られる。また、既存のオフィスをホテルに転用するビジネスプランを公表した不動産会社もあった。ホテルのストックが増加するのであれば需要を減らさないために入込客数の維持、ひいてはリピーターの確保は重要だ。

また別の課題としてはネット環境の向上が挙げられる。そもそも行きの米国人女性と会話を交わしたきっかけは、社内販売が通り過ぎる時に彼女がWi-Fiができるか尋ねたことだった。「事前にご予約いただければ使えます」。このやりとりを仲介したのだった。当然インターネットができると思っていた彼女は、旅行プラン作りの続きができず窓から外を眺めているしかないと残念そうにつぶやいた。リピーター確保のためにも既存の国内顧客のためにも長距離移動中のインターネット環境をより使い勝手のよいものにする必要がありそうだ。

外国からの客人にこの国を満喫していただくために取り組みは多岐にわたるだろう。京都の推薦スポットを聞かれて、挙げた先が修学旅行レベルからさして変わっていない自分の日本人力向上は言わずもがなだ。

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