2014年11月21日

韓国政府が基礎年金制度を導入―制度の仕組みと今後の課題

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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■要旨

  • 韓国政府は、2014年7月から既存の「基礎老齢年金制度」を廃止し、新しく「基礎年金制度」を導入・施行している。
  • 基礎年金制度を導入した理由は、無年金者や低年金者を含め経済的に自立度が低い高齢者の老後所得を補完するためである。
  • 基礎年金の受給対象は65歳以上の高齢者のうち、所得認定額が下位70%に該当する者であり、最低10万ウォンから最大20万ウォンまでの給付が支給される。
  • 基礎年金は、加入期間が長くなればなるほど基礎年金の給付額が減少する仕組みになっているので、野党や市民団体等は現在の基礎年金制度は、誠実に年金制度に加入した人や若者にとってむしろ不利になる仕組みであるとして、制度の改正を強く求めている。
  • 基礎年金の導入により、高齢者貧困率が少しは改善されると期待されている中で、10~20万ウォンの基礎年金だけで高齢者貧困率を引き下げるには限界があるという主張も出ている。
  • 給付の対象を、低所得者、例えば所得水準が貧困線以下の低所得高齢者に絞り、より手厚い給付を行うなどの工夫が必要である。
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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
    ・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

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