2014年11月20日

貿易統計14年10月~輸出に明るい兆し

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・貿易赤字は大幅に縮小
・原油価格の大幅下落で貿易赤字の縮小が続く公算
・輸出は全ての地域向けに増加


■要旨

財務省が11月20日に公表した貿易統計によると、14年10月の貿易収支は▲7,100億円の赤字となったが、赤字幅は市場予想(QUICK集計:▲10,224億円、当社予想は▲10,649億円)を大きく下回った。輸出の伸びが9月の前年比6.9%から同9.6%へと高まる一方、輸入の伸びが9月の前年比6.2%から同2.7%へと大きく鈍化したため、貿易収支は前年に比べ3,904億円の大幅改善となった。

季節調整済の貿易収支は▲9,775億円の赤字となり、9月の▲10,677億円から赤字幅が縮小した。貿易赤字(季節調整値)は▲1兆円前後(年率換算値では▲12兆円前後)で横這い圏の動きが続いているが、世界経済の減速懸念などからここにきて原油価格が大幅に下落しており、このことが輸入価格の低下を通じて先行きの貿易収支の改善に大きく寄与する可能性が高い。通関(入着)ベースの原油価格は7月の1バレル=111.8ドルから10月には101.0ドルまで1割程度低下したが、足もとの原油価格はWTI先物、ドバイ原油ともに70ドル台半ばとそれよりも2割以上低い水準となっている。通関ベースの原油価格はドバイ原油に遅れて動く傾向があるため(ただし、運賃や保険料が含まれるため入着ベースの原油価格のほうが水準は若干高い)、11月以降も大幅な下落が続くことが見込まれる。ここにきて再び加速している円安は輸入価格の上昇要因だが、当面は原油安の影響が上回ることにより、貿易赤字は縮小傾向が続くだろう。なお、原油価格が2割下落した場合、年間ベースの貿易赤字は約4兆円少なくなる。

10月の輸出数量指数を地域別(当研究所による季節調整値)に見ると、米国向けが前月比4.2%(9月:同1.7%)、EU向けが前月比9.4%(9月:同▲6.2%)、アジア向けが前月比3.1%(9月:同3.6%)といずれの地域向けも高い伸びとなり、全体では前月比2.9%(9月:同0.9%)であった。単月の動きだけで判断するのは早計だが、国内需要の回復が遅れる中で、輸出に持ち直しの動きが見られることは日本経済にとって明るい材料だ。一方、10月の輸入数量指数(当研究所による季節調整値)は前月比▲2.4%(9月:同2.2%)となり、10月の水準は7-9月期よりも▲1.5%低くなった。国内需要の回復が遅れていることを反映したものと考えられる。

14年7-9月期のGDP統計の外需寄与度は前期比0.1%とほぼ横這いにとどまったが、輸入の低迷が続く一方、輸出に持ち直しの動きが見られることから、10-12月期は成長率を大きく押し上げる可能性も出てきた。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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