2014年11月04日

【台湾7-9月期GDP】前年同期比+3.8%~輸出主導の経済成長が継続~

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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1.7-9月期は前年同期比+3.8%

台湾の行政院主計総処(DGBAS)は10月31日、2014年7-9月期の実質域内総生産(GDP)の速報値を公表した。成長率は前年同期比(原系列)+3.8%と、前期(同+3.7%)から小幅ながら加速した。これは8月に行政院主計総処が公表した見通し (同+3.6%)を上回ったものの、市場予想 (同+3.9%)は下回る結果であった。
台湾の実質GDP成長率(需要側)/台湾の実質GDP成長率(供給側)

2.輸出主導の経済成長が継続

2014年7-9月期の成長率は4期続けて加速し、7四半期ぶりの高水準を記録した。台湾は、前期に続いて輸出の拡大が消費・投資の増加に繋がる好循環が生まれている。

7-9月期の実質輸出は、ICT製品や光学機器などの輸出が伸び悩んだものの、電子製品、機械、基本金属などが全体を押し上げた。月次の貿易統計から国別輸出を見ると、海外需要の拡大を受けて中国・欧州・日本・ASEAN向けがそれぞれ拡大した上、米国向けも底堅く推移するなど全体として加速している。輸出向けの生産拡大は、設備投資の拡大に加えて、雇用や従業員の平均月額給与の増加を通じ、個人消費の緩やかな改善にも寄与している。また、輸出の先行指数とされる輸出受注額は、9月は前年同月比+12.7%と加速していることから、当面は輸出主導の景気回復が続きそうである。

また、景気の下押し材料としては、9月に浮上した違法ラード事件 が挙げられる。同事件を受けて、飲食業や食品産業に負の影響が出てきている。また、政府(衛生福利部)が実施している食用油業者に対する全面調査はまだ終わっておらず、消費者心理の悪化が懸念される。

違法ラード問題は、先行きの台湾経済にとって重要な中台関係にも影響している。11月29日に予定される統一地方選では、与党・国民党が進める親中路線に加え、食の安全問題を巡る政府の対応も争点となっており、与党・国民党は苦しい状況にある。この統一地方選は総統選(2016年1月)の前哨戦でもあるだけに注目度は高い。仮に与党・国民党が敗北ともなれば、中台貿易協定の交渉が長期に停滞することは避けられない。
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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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