2014年10月30日

消費増税及び相続税強化による住宅市場への影響~市場に多大な影響を及ぼさない課税のあり方を模索すべき~

社会研究部 土地・住宅政策室長 篠原 二三夫

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■見出し

1―はじめに
2―1997年増税前後の住宅市場
 (1) 住宅着工総戸数の推移と社会経済情勢
 (2) 駆け込みと反動減の把握
 (3) 持家・貸家・分譲住宅における駆け込みと反動減(1996年~98年)
3―2014年増税前後の住宅市場
 (1) 住宅着工総数の推移
 (2) 持家・貸家・分譲住宅における駆け込みと反動減(2013年~2014年)
4―むすびにかえて
 (1) 今回増税による住宅着工の駆け込みと反動
 (2) 2015年10月1日の増税
 (3) 今後の増税に際して

■introduction

今回の消費増税時における住宅着工の駆け込みと反動減は、増税幅が2%から3%と1.5倍になったにも関わらず、総着工戸数の水準を考慮するならば、1997年当時と実質的な規模において大差はなかった。これには経済環境の改善が大きいが、駆け込みと反動減を軽減する措置などの導入が一定の効果をもたらしたとみることもできる。持家着工と分譲住宅着工の反動減はまだ続いており、この解消には数ヶ月程度の期間を要するだろう。貸家着工については消費増税の影響のみならず、相続税強化によって、いまだに駆け込みが続いているが、近いうちに反動減が始まるものと判断される。

今回の増税後に、駆け込みと反動減だけでなく、1997年の増税後に生じた総需要の減少といった状況は生じないものと考えられるが、当時の経験からも、来年の増税時には増税に見合った経済成長の確保が必須である。

消費増税は財政立て直しの観点から今後も実施せざるを得ないだろうが、10%ほどの増税に40年以上をかけた英独などのような余裕はなく、より迅速な対応が要請されることになるだろう。こうした状況下で、高額な住宅に対して急激な増税が行われた場合、家計や市場にこれまでにはなかった大きな負担を与える懸念がある。

したがって、さらなる増税時には、固定資産税や流通税などの負担状況も考慮しつつ、適切な負担軽減措置の導入が検討される必要がある。その場合、消費課税については、単一税率を維持する意義からも、軽減税率よりもカナダ型の住宅給付金制度の導入を考慮し、増税時には駆け込みや反動減などを効率的に取り除き、住宅市場の混乱を回避できるようにすべきである。相続税などについても、市場に多大な混乱を与えないという観点から、税の三原則である公平・中立・簡素のうち、いまだ確立にはほど遠い「中立」に重点を置いた制度の再構築を模索すべきである。

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社会研究部   土地・住宅政策室長

篠原 二三夫 (しのはら ふみお)

研究・専門分野
土地・住宅政策、都市・地域計画、不動産市場

(2014年10月30日「基礎研レポート」)

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