2014年10月22日

貿易統計14年9月~原油価格の大幅下落で先行きの貿易赤字は縮小へ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・輸出入ともに増加に転じる
・原油価格の大幅下落で先行きの貿易赤字は縮小へ
・輸出は横這い圏の動きが続く
・7-9月期の外需寄与度は前期比▲0.1%程度のマイナスへ

■要旨

財務省が10月22日に公表した貿易統計によると、14年9月の貿易収支は▲9,583億円の赤字となった。輸出(8月:前年比▲1.3%→9月:同6.9%)、輸入(8月:前年比▲1.4%→9月:同6.2%)ともに前年比で増加に転じたが、貿易収支は小幅ながら3ヵ月ぶりに前年よりも悪化した。

季節調整済の貿易収支は▲10,701億円の赤字となり、8月の▲9,124億円から赤字幅が拡大した。四半期ベースの貿易赤字(季節調整済・年率換算値)は14年1-3月期の▲17.9兆円から4-6月期は駆け込み需要の反動による国内需要の落ち込みを主因とした輸入の減少から▲11.2兆円まで縮小したが、7-9月期は国内需要の持ち直しに伴い輸入が増加に転じたため▲12.0兆円と赤字幅が再拡大した。
ただし、世界経済の減速懸念などからここにきて原油価格が大幅に下落しており、このことが輸入価格の低下を通じて先行きの貿易収支の改善に大きく寄与する可能性が高い。9月の通関ベースの104.1ドル/バレルだったが、足もとの原油価格はWTI先物、ドバイ原油ともに80ドル台とそれよりも2割程度低い水準となっている。通関(入着)ベースの原油価格はドバイ原油に遅れて動く傾向があるため(ただし、運賃や保険料が含まれるため入着ベースの原油価格のほうが水準は若干高い)、10月以降大幅に下落することが見込まれる。なお、原油価格が2割下落した場合、年間ベースの貿易赤字は約4兆円少なくなる(LNGが原油価格に連動して下落するとして試算)。

7-9月期の輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)で見ると、米国向けが前期比▲2.1%(4-6月期:同▲0.9%)、EU向けが前期比▲1.6%(4-6月期:同0.8%)、アジア向けが前期比1.4%(4-6月期:同▲1.7%)、全体では前期比0.5%(4-6月期:同▲0.3%)であった。アジア向けは持ち直しの動きが見られるが、米国向け、EU向けが低調で、全体では依然として横這い圏の推移が続いている。米国経済は回復基調が明確となっているが、現地生産拡大の影響から自動車輸出の大幅な落ち込みが続いていることが、米国向け輸出全体を大きく押し下げている。

9月までの貿易統計と8月までの国際収支統計の結果を踏まえて、7-9月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比1%弱の増加、輸入が前期比1%台前半の増加となることが見込まれる。この結果、7-9月期の外需寄与度は前期比▲0.1%(4-6月期:同1.1%)と小幅ながら2四半期ぶりのマイナスとなることが予想される。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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