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今年1月、経済財政諮問会議の下に「選択する未来」委員会が設置された。日本の半世紀先の未来像を描き、持続的な成長・発展のための課題とその克服に向けた対応策を検討するためだ。5月には、これまでの議論の中間整理「未来への選択」を公表し、『50年後に1億人程度の安定した人口構造を保持することを目指し、少子化・人口減少の克服や地方再生などに総合的に取り組む』としている。
先日、内閣府が主催の「選択する未来」シンポジウムが開催された。副題が「日本の未来像-人口急減・超高齢社会を乗り越える」だった。このシンポジウムの基調講演では、『現状のまま何もしない場合、私たちには極めて厳しく困難な未来が待ち受けている。しかし、制度、政策、人々の意識が速やかに変わるならば、未来は変えることができる』という基本認識が示されるとともに、特に少子化の進行に対する危機意識を社会全体が広く共有することが重要だと強調されていた。
その背景には、同委員会委員の元総務大臣増田寛也さんが公表した『2040年には全国の自治体の49.8%に当たる896の市区町村が消滅の危機に直面する』という衝撃的なレポートがあるのだろう。7月には全国知事会も「少子化非常事態宣言」を出し、『このままでは地方の多くは消滅しかねず、日本は国家の基盤を危うくする重大な岐路に立たされている』と少子化に対する危機感を露わにしている。また、パネリストのひとり、前少子化対策担当大臣の森まさこさんは、日本の家族関係社会支出が対GDP比0.96%と非常に低いことを指摘し、少子化対策のための財源確保の重要性を主張された。
シンポジウムの流れでは、日本の社会保障制度をこれまでの医療、介護、年金など高齢者福祉重点から、少子化対策強化へ転換することを訴えているように思われたが、ここでひとつ留意点がある。それは、日本の高齢者に対する社会支出は、高齢化率の高さを勘案すると、必ずしも諸外国に比べて高い訳ではないことだ。むしろ、先日公表された生活保護世帯数は158万世帯、うち高齢世帯が71万世帯と全体の45%を占めることからすれば、今後はより多くの財源が高齢者福祉に必要となろう。
では、どのように少子化対策の財源を確保したらよいだろう。高齢世帯を中心に生活保護が増える一方で、個人金融資産の大半を高齢世代が保有しており、高齢世代内の経済格差が拡大しているのだ。したがって、高齢者福祉は高齢者の世代内相互扶助を促進することで維持・向上を図り、それにより軽減する社会支出を少子化対策に充てることが有効ではないだろうか。少子高齢化が深刻化する現在、高齢化と少子化の課題は不可分であり、ふたつを同時に解決する処方箋が求められているのである。
土堤内 昭雄
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(2014年10月20日「研究員の眼」)
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