コラム
2014年10月16日

女性活用がブームでないなら-奈良時代の制度と比較して税の公平性を考える

金融研究部 准主任研究員   高岡 和佳子

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『女性の活用が叫ばれたのは、好景気か戦争で男手が足りなくなった時。女性を本当に尊重しようとしているか、よく見極めて』
   これは、2014年10月7日付の東京新聞朝刊に掲載されたものだ。東京五輪を機に採用された元女性記者が後輩女性記者に助言している。確かに、さしあたり女性活用が叫ばれている背景には、少子・高齢化による男手の不足がある。これに対して「すべての女性が輝く政策パッケージ」(以下「パッケージ」)が決定されるなど、女性を尊重する動きもある。これらは果たして本物だろうか。

歴史の教科書に載っている「租・庸・調」を覚えている方は多いだろう。租は田の面積に応じて課される税、調は一定年齢以上の男性に布などを課す税である。庸は一定年齢以上の男性に労働を課す税であるが、国税庁のメールマガジンによると、実際は労働ではなく、代納として布を納めたらしい。同じく国税庁の税務大学校「税の歴史クイズ」によると、平城京と畿内(大和、山背、河内、摂津、和泉)に住む庶民には庸・調が免除されていたらしいが、その理由がとても興味深い。他の地域と異なり、平城京と畿内に住む人は都の工事などに駆り出されることが多かったからだ。

現代の税制と比べると、担税力を田の面積(所得)で捉える租は、所得税や住民税の所得割に近い。一方、庸・調は、担税力にかかわらず税が課される人頭税である。住民税の均等割も国民年金の保険料も一定の要件を満たせば免除されるが、所得金額に関係なく定額を支払うという点で庸・調と似ている。奈良時代において庸・調が免除されるのは労役に服した人であった一方、現代において国民年金の保険料が免除されるのは、労働市場に参入していない会社員や公務員の配偶者である。免除される対象が正反対だ。筆者のような立場からすると、労役に服した人が税を免除される奈良時代のほうが公平だと感じる。しかし、少し考えれば、奈良時代のほうが公平なのではなく、奈良時代から変わらず「女性は付帯者に過ぎない」といった考えが根付いているに過ぎないとわかる。

肉体労働は女性には不向きだから、庸・調は男性にのみ課されたといった意見もあろう。しかし、実際は代納が主流であったのだから、奈良時代には既に女性は付帯者であるといった考えが根付いていたと考えるほうが自然だろう。今も、労働市場に参入していない会社員や公務員の配偶者の国民年金の保険料が免除されているのではなく、付帯者に過ぎない女性には納税を課していないということだ。言い換えると、求められてもいないのに奇特な女性が労働市場に参入し、納税しているといった考えがあるのだと思う。

パッケージには、(女性が)生き方を尊重されるような社会づくりが必要とある。女性が尊重される社会に、女性は付帯者に過ぎないといった考え方は馴染まない。女性を本当に尊重しようと考えているのなら、女性が付帯者に過ぎないといった考え方が残る税や社会保険制度の改革が必要だ。パッケージにも、働き方に中立な税制、社会保障制度、配偶者手当等について、「『日本再興戦略』改訂2014」(平成26年6月閣議決定)等を踏まえ、年末までに検討する、といった文言がある。

しかし、女性が付帯者に過ぎないといった考え方を払拭し、実際に第3号被保険者制度や配偶者控除の廃止といった働き方に中立的な案が出れば、「サラリーマン世帯を狙い撃ち」といった批判があがるに違いないと筆者は懸念している。

家庭に入り、自ら良質な家事や子育を実施したいと考える女性も尊重すべきだ。しかし、自らの意思で選択する以上、それに掛る費用を自ら負担するというのが筋ではないだろうか。例えば、仮に共働き家庭が、家事代行サービスを利用する際に掛かった費用に応じて税などを免除すべきと主張したらどうだろう。自らの意思でサービスを利用しているのだから、その費用は自分で負担しろと非難されるのが落ちだ。共働き家庭の例えと同様に、家庭に入ることを自ら選択するのだから、その費用はそのメリットを享受する本人やその家族が負担すべきだ。所得が無いのだから所得税まで課す必要は無いだろうが、配偶者(特別)控除や、国民年金保険料の免除は不要と思っている。

今後、働き方に中立な税制、社会保障制度、配偶者手当等に関する検討が進む中で、万が一女性が付帯者に過ぎないといった考え方が払拭されないならば、女性を本気で尊重しようとはしていないと言うことだろう。


 
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金融研究部   准主任研究員

高岡 和佳子 (たかおか わかこ)

研究・専門分野
リスク管理・ALM、価格評価、企業分析

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