コラム
2014年10月14日

リノベーションした中古マンション購入で注意すべきことは?

  松村 徹

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注目される中古マンションのリノベーション
   全国のマンションストックが600万戸に積み上がる中、中古マンション購入にも注目が集まるようになってきました。国土交通省のマンション総合調査によると、マンション購入者のうち3分の1が中古マンションを購入しています。新築分譲マンションのモデルルームを訪れた人の4分の3が中古マンションも同時に検討しているという調査もあります。
   中古マンションの大きな魅力は、新築に比べて2割は安いとされる価格で、最近は建築費や地価の上昇で新築分譲マンション価格が上昇傾向にあるため、中古マンションもマイホームの検討対象に加える消費者が増えています。また、建築前に販売される新築物件と違い、実際の物件を自分の目で確認できるうえ、マンション住人などから管理実態に関する情報を得ることもできます。
   また、中古マンション購入では、古くなったキッチンや洗面台などの水周りや壁紙などを新しいものに取り換えるリフォームでは満足できず、自分好みの間取りや内装に一新するリノベーションを施す人も増えています。ある調査によると、中古マンション購入者のうち、取得後にリフォームやリノベーションを実施した者が3割を占めています。このような動きを受けて、最近では中古住宅購入とリフォームやリノベーション一体の住宅ローンも可能になりました。
   居住者が自分好みの間取りや内装に改修する場合、マンション購入後に実施することになりますが、どんな工事も自由にできるわけではありません。マンションによっては管理規約などで実施できない工事もあり、購入前に確認しておく必要があります。また、設計や工事発注など面倒なことも多いうえ、無知につけ込む悪質な工事業者もいるので注意が必要です。
   これに対して、不動産会社などのプロが中古マンションを住戸単位で取得して、あらかじめ内装や水周りを一新して販売する「リノベマンション」も増えています。さらに、社宅や賃貸マンションを取得して1棟単位で改修、設備更新したうえで全戸を再分譲する「1棟リノベマンション」もあります。前述の調査では、このような売主によるリフォームやリノベーション済み物件を取得した人は全体の2割を占めています。

古いマンションは耐震性能が不透明
   中古マンション購入の大きな問題は、建築後三十数年経過したような古いマンションの耐震性が十分かどうかについて、買い手がほとんど知ることができないことです。中古マンションの査定マニュアルでは、1981年着工の旧耐震設計基準で建てられたマンションより、1982年着工の新耐震設計基準で建てられたマンションの方が僅かに0.5%だけ高く評価されますが、これは建築後の経過年数1年分の差でしかなく、耐震設計基準の差は考慮されていないことを意味しています。
   旧耐震物件すべてが新耐震物件より危険というわけでは必ずしもありませんが、法改正によって明らかに品質が異なるはずの物件を経過年数の差でしか評価しないことは、プロの投資家同士で売買されるオフィスビルでは絶対にありえない話です。例えば、ビルの買い手は耐震設計基準を参考にしつつも、デューデリジェンスといわれる詳細な個別調査を行い、係数化された建物の震災リスクを判断の基準にします。しかし、マンションの場合、旧耐震設計基準で建てられた物件だからといって、住戸の購入者がマンション全体の耐震性や震災リスクを調査することは不可能です。
   実は、管理組合員の合意形成が難しいため、旧耐震設計基準で建てられた古いマンションの耐震診断はほとんど進んでいません。耐震診断には費用が必要ですが、診断の結果、耐震補強が必要だとわかった場合には、補強工事をするかどうかで新たな予算問題が生じますし、工事をしなければ耐震性に問題のあるマンションとして資産価値が落ちるリスクがあります。それなら、いっそのこと耐震診断自体を回避しようという心理が管理組合に働くであろうことは否定できません。

重要な管理面のチェック
   このように、売主によるリノベーション済みのマンション住戸の購入を検討する場合、古すぎるものは要注意です。まず新耐震設計基準であることが必須といえるでしょう。
   また、マンションは建物・設備も当然重要ですが、快適に住み続けるためには買った後の維持管理も同じように大事です。住戸単位でリノベーションやリフォームを行った場合、自分が住む専有部分だけが美しくなっても、建物全体の耐震性の問題や配管など設備の老朽化問題が手付かずであったり、住民同士のトラブルなど管理組合がうまく機能していなかったりすれば、快適な生活は早晩維持できなくなるからです。
   このため、建物全体の維持管理が適切で大規模修繕が計画通り行われていること、管理費・修繕積立金の長期滞納やトラブルがなく管理組合が円滑に運営されていること、改修した住戸の瑕疵保証が付いていること、さらにこれらについて再販業者からしっかり説明を受けられるかどうかが重要です。全戸が再販される「1棟リノベマンション」でも、販売後の管理体制についてしっかり確認しておくべきでしょう。いずれにしても、住戸内や共用部のお化粧直しだけに目を奪われず、構造面や管理面など目に見えない部分のチェックを怠らないことが肝要です。


 
  1 リノベーションの定義は実施する会社によって異なるうえ、融資の現場やマスコミでは、リフォームとリノベーションという言葉が厳密に区別されずに使用されている例も多いため、どちらか明確に区別できない場合は「リフォームやリノベーション」と表記しています。

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(2014年10月14日「研究員の眼」)

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