2014年10月07日

巨大化するスマホからの警鐘

経済研究部 シニアエコノミスト   上野 剛志

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スマホ(スマートフォン)の巨大化が止まらない。登場初期には画面サイズ3インチ台が主流であったのがどんどん大きくなり、現在のラインナップは5インチ台が主流になっている。中には6インチ台も存在している。調べたところ、携帯大手3社がホームページに掲載しているスマホ製品(8/11現在、iPhone、2012年以前のモデルは除く)のうち、6割強が5インチ以上であった[図表1]。残りは4インチ台だ(3インチ台はなし)。過去の電子製品、特に持ち歩くものは技術進歩に伴って小型化していく流れが一般的であっただけに、特異な動きである。



スマホが巨大化した最大の理由はゲームやSNS、ネットの閲覧などにおいて、画面が大きい方が見やすいためだと思われる。また、スマホの弱点であるバッテリー容量を大型化できるという利点もあるようだ。ただし、巨大化には、携帯性や(片手での)操作性が犠牲になるというデメリットもある。筆者の周囲やネット上の意見を見ても、巨大化についての賛否は分かれている。
   また、そもそもスマホ登場前からあるガラケー(フィーチャーフォン)を支持する人もいる。理由は様々だが、費用面を除くと、高い操作性(物理キーによる入力のしやすさ)を評価する声が多い。通常、製品の発展過程では、旧型から新型へのシフトが着実に進むだけに、「ガラケー支持派」が一大勢力であり続けているのは印象的だ。
   携帯電話に対するこのような意見の相違は、「そもそも携帯電話にその人が何を一番求めるか?」に起因しており、一概に優劣の問題ではない。パソコンのような機能や環境を求めるのであれば、巨大スマホが最適だろう。通話やメール機能を重視するのであれば、操作性の高いガラケーが最適かもしれない。また、筆者のような小型スマホ派は、パソコン機能と操作性・携帯性の両立を重視していると考えられる。
   このように、消費者の嗜好は多様であるのに対し、供給者側(メーカーやキャリア)のスマホシフト、さらに巨大化の流れは顕著である。とりわけ問題に感じるのは、「一斉に右へならえ」的な動きを見せていることだ。巨大スマホ自体を否定するわけではないが、製品に占める巨大スマホの割合が一気に高まることで、小型スマホ派やガラケー派の選択肢は非常に限られてしまっている。例えば、ガラケーについて言えば、利用状況を示す契約数では依然としてスマホを上回っているにもかかわらず[図表2]、販売中モデル(2012年以前のモデルは除く)に占めるガラケーの割合はスマホの1/5にも満たない[図表1]。



巨大化が世界的な業界の潮流なのかもしれないし、幅広い製品ラインナップを維持することは採算という点からマイナスであることは理解できる。ただし、それは供給者側の都合のように映る。やはり大切なのは、まず消費者の多様なニーズに応えることではないだろうか。現に国内自動車業界はハイブリッド車、SUV、ミニバン、セダン、スポーツカー、軽自動車など幅広い製品群を維持している。そして、それぞれの車種が独自の進化を続けることで消費者の多様なニーズに応え、世界的に高い支持を得ている。
   過去、一部の日本企業は何に使うのかわからないような高機能を追求し、供給者側の作りたいもの・売りたいものに注力したことで消費者離れを起こし、競争力を喪失した苦い経験があるはず。スマホの一斉巨大化を見るにつけ、そのような事態が再来することへの警鐘が発せられているように感じる。
   携帯電話も、“スマホの一斉巨大化”ではなく、幅広いニーズを汲み取り、独自の進化を遂げることによる“顧客満足の巨大化”を競って欲しい。そこには“商機”と“勝機”があるはずだ。

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経済研究部   シニアエコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融、日本経済

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