2014年09月05日

株高・円安が生保に追い風-2013年度生命保険会社決算の概要

保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   安井 義浩

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1―保険業績[全社]

2013年度の生命保険会社43社の保険業績を概観する。43社合計では、新契約高は▲6.4%減少、保有契約高は▲1.4%減少となった。これらを、伝統的生保(13社)、外資系生保(16社)、損保系生保(7社)、異業種系生保等(6社)、かんぽ生命に、さらに分類してみる。(図表1)
   「伝統的生保」(以下、大手中堅9社数値で表示)の新契約高は▲7.1%の減少(前年度は2.8%の増加)と、マイナスに転じた。2013年4月の標準利率引き下げを契機とした保険料の値上げにより、2013年度は、貯蓄性商品の優位性が失われ、販売の減少や一時販売停止につながった面が大きい。保有契約高は▲3.3%(前年度は▲3.5%)と引き続き減少した。
   「外資系生保」は、新契約増加率が▲8.1%と前年の20.1%から一気に減少に転じた。こちらは、個人年金は増加したものの、個人保険分野で大きく落ち込んだ。保有契約は、引き続き3.7%と(前年度は7.1%)引き続き増加した。
   「損保系生保」は、新契約が▲11.0%減少、保有契約は5.8%増加となっている。
   「異業種系生保等」は新契約が▲6.1%減少、保有契約5.1%増加となっている。
   次に、新契約年換算保険料の状況を見たものが図表2である。42社(かんぽ生命を除く)合計で、個人保険は対前年▲4.8%と減少に転じた。(前年度は3.4%増加)
   また、個人年金は▲1.4%の減少となった。伝統的生保では年金は減少している一方で、外資系・損保系では増加している。損保系では、医療保険が好調だったため、年換算保険料ベースでは増加している。なお、外資系・損保系の会社は外貨建年金を取り扱う会社も多く、円安により金額が増加する要素もある。
   第三分野については、外資系を中心として、ほぼ全般的に、引き続き進展しており、15.3%の増加となった。




2―大手中堅9社の収支状況

1│増加した基礎利益

2013年度の資産運用環境は図表3の通りであり、2012年度に引き続き株高・円安と、生命保険会社の資産運用にとっては、追い風であった。図表4に有価証券含み益を示したが、大手中堅9社で1.1兆円増加した。内訳は、国内株式で1.6兆円および外国証券で0.5兆円増加する一方で、国内債券については、金利が若干上昇したために、▲1.1兆円減少した。
   そうした中、2013年度の基礎利益は21,993億円、対前年度10.5%の増益となった。(図表1) 2013年度の大きな特徴は、9社合計では逆ざやが解消し、利差益となったことであろう。
   3利源とも数値を公表している7社の数値を見たものが図表5である。危険差益は前年度に引き続き、▲5.2%の減少と、保有契約の減少による影響が現れたものと考えられる。一方で危険差益のうち保有契約高に表れない第三分野商品の利益は増加基調にあると推測される。一方、費差益については、5.4%の増加となった。事業費そのものは大きく減少しているので、各社とも、保有契約の減少という厳しい認識を持ったうえで、経費節減に努めているものと思われる。




2│解消した逆ざや

逆ざやについては、責任準備金に対する率が、前年度の▲0.12%から+0.12%に転じ、さしあたって逆ざやは解消した。(図表6)
   「平均予定利率」は、毎年0.1%程度の緩やかな低下を続けており、今後しばらくこの傾向は続くだろう。
   一方、「基礎利回り」は、0.15ポイント上昇した。利息配当金収入が各社とも増加しているが、株式配当金の増加や外国証券の利息や配当金が円安のおかげで円ベースでも順調に収入されたことによるものであろう。




3│増加した当期利益は、内部留保の充実・配当還元へ

当期利益も基礎利益同様、大幅に増加した。(図表7)
   キャピタル損益((2)+(3))は、大きく増加し、基礎利益とキャピタル損益の合計額は24,480億円と対前年度+6,731億円の増益となった。また、「(8)その他」はほとんどが、追加責任準備金(逆ざや対策で、予定利率よりも低い評価利率で高めの責任準備金を積んだ追加額)の繰入額である。
   危険準備金、価格変動準備金、ならびに追加責任準備金を積み立てる前の状態は20,846億円(A')である。
   利益の使途であるが、危険準備金、価格変動準備金ともほぼ9社全社が残高を増加させている。(内部留保の増加(B))、さらにこれに追加的責任準備金繰入を加算した実質的な内部留保の増加額(B')も14,333億円と、前年に比べさらに増加した。
   一方、配当であるが、増配したのが大手中堅9社中4社、将来の配当財源を今回確保した会社も2社あったため、6,513億円が還元されることとなった。今年度は、内部留保の充実に重点がおかれているものの、利益が比較的潤沢であることから、内部留保を充実させる一方で、配当還元額も増加しており、良好な運用環境を背景に、契約者の期待に応える努力も感じられる。




4│上昇したソルベンシー・マージン比率

ソルベンシー・マージン比率(9社合計ベース)をみたものが図表8である。9社合計で算出した当該比率は前年度の767.3%から833.6%へと上昇した。これは、その他有価証券に分類される株式の含み益の増加が大きな要因である。
   また、オンバランス自己資本(貸借対照表の資本、危険準備金、価格変動準備金など)を積み増すことができたことも大きな要因である。
   以上、2013年度の生保決算を概観したが、今後とも、生保を取り巻く環境の変化と、基礎利益の動向や配当還元の状況につき注目していく必要があるだろう。

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保険研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

安井 義浩 (やすい よしひろ)

研究・専門分野
保険会計・計理、共済計理人・コンサルティング業務

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