コラム
2014年08月15日

実はブレーキがない年金削減!?~マクロ経済スライド終了手順の議論、決定、周知を

保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   中嶋 邦夫

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現在の年金制度は、年金財政がバランスするまで給付削減を続ける仕組みになっています。言い換えれば、年金財政がバランスすれば給付削減が終わる仕組みです。6月3日に発表された公的年金の財政見通し(財政検証)では、来年4月から本格的な給付削減(マクロ経済スライド)が始まり、早ければ2017年度には厚生年金の給付削減が終了する結果になっています。しかし、給付削減を終了するための具体的な手順は未だ決まっておらず、議論すら始まっていません。年金不信を招かないためにも、早めに議論を始め、決定し、国民に周知しておく必要があるでしょう。

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現在の年金制度は、年金財政が破綻しないように、給付を削減して年金財政のバランスを保つ仕組みになっています。6月3日に発表された公的年金の財政見通しでは、いつまで給付削減を続ければ年金財政がバランスするかが、数通りの前提の下で計算されています。この結果をみると、全受給者に共通する基礎年金(1階部分)は2040年過ぎまで削減を続ける必要があるのに対し、会社員OBなどが受け取る厚生年金(2階部分)は早ければ2017年に削減が終了する見通しになっています(図表1、図表2)。


図表1 給付削減終了年の見通し/図表2 給付削減のイメージ(ケースA)


このように、早ければ3年後には給付削減が終了する見込みになっていますが、現時点では給付削減を終了するための具体的な手順が決まっていません。現在の法律では「財政見通しを見て給付削減の終了を判断する」ことしか決まっておらず、(1)どういう前提の財政見通しで判断するかや、(2)どのタイミングで作成された財政見通しで判断するか、などの詳細は明確になっていません。

(1)は、どのような前提を使うかによって、ある年に給付削減を終了できるかどうかの判断が変わるため、重要なポイントとなります。今回の財政見通しを見ても、アベノミクスが成功する前提のケースA~Eでは厚生年金の給付削減が2017年頃に終了する見通しですが、アベノミクスが成功しない前提のケースFやGでは2030年前後にずれ込む見通しになっています(図表1)。また、少子化や長寿化が進んだ場合には、さらに削減終了が遅れる見通しになっています(図表3)。

(2)も重要なポイントです。年金財政の見通しは、5年に1度実施される国勢調査をもとにしているため、通常では次回の財政見通しの計算は2019年になります(図表4)。一方で、厚生年金の給付削減は、前述のとおり早ければ2017年に終了する見通しになっています。このように財政見通しの計算の中間年に給付削減の終了があり得る場合に、どのタイミングで作成された財政見通しを使って判断するかを決める必要があります。例えば、今回(2014年)の財政見通しを使って何年に終了するかをあらかじめ決めておくという方法もあり得ますし、2017年など給付削減の終了が見込まれる年に臨時で財政見通しを計算して判断するという方法も考えられます。あるいは、年金財政の健全性を慎重に考える立場からは、2017年など中間年には給付削減を終了させず、次回(2019年)の財政見通しを使って判断する、という方法も考えられます。

現在、政府の審議会では低インフレ時にも給付削減を徹底するなどの見直しが議論されていて、目前に迫りつつある給付削減終了の具体的な手順は議題にすらのぼっていません。しかし、議論を放置して給付削減の終了直前に具体的な手順を決めると、恣意的な決定として年金不信が強まったり、判断がその時々の政治情勢に左右される可能性もあります。こういった事態にならないよう、給付削減終了の具体的な手順を早めに議論し、決定して、国民に周知しておくべきではないでしょうか。


図表3 出生率や死亡率が変わった場合の給付削減終了年の見通し/図表4 財政見通し作成時期と給付削減終了年(見通し)の関係

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保険研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度

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