2014年08月11日

7月マネー統計~マネーは伸び悩みだがリスク性資産投資は堅調

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■見出し

・貸出動向: 増勢に一服感
・主要銀行貸出動向アンケート調査個人の資金需要が急落
・マネタリーベース: 前月末比減少だが問題なし
・マネーストック: 全体は伸び悩みだがリスク性資産投資は堅調

■要旨

7月の銀行貸出(平残)の伸び率は前年比2.3%と3ヵ月ぶりに伸び率が縮小した。前年の大口貸出の反動や円安効果剥落に伴う外貨建て融資の目減りが影響した模様。貸出の増勢自体は続いている。ただし、貸出残高の前月差を見ると今年に入ってからは一進一退となっており、増勢に一服感が出ている。

主要銀行貸出動向アンケート調査によれば、2014年4-6月期の企業の資金需要増減を示す企業向け資金需要判断D.I.は、前回から横ばいの5となった。一方、個人向けD.I.は-10と、前回比で30ポイントもの大幅下落を示した。この低下幅は2000年の調査開始以来最大であり、D.I.の水準もマイナス圏(「減少」が優勢)になっている。消費税率引き上げ後の反動減により、とりわけ住宅ローンへの影響が大きく出た。

7月のマネタリーベース平残は243.1兆円と17ヵ月連続で過去最高を更新。一方、月末のマネタリーベース残高は6月末から0.2兆円減少したが、国債の発行超過が多額にのぼり、資金が吸収されたという特殊要因の影響が大きい。また、上記のとおり、平均残高ベースでは引き続き過去最高を更新しており、その増加額も6月比で9.9兆円に達している。

マネーストック統計によると、市中通貨量を示す7月のM2、M3の前年比伸び率は縮小。縮小は6ヵ月連続となる。一方、M3に投信や外債といったリスク性資産等を含めた広義流動性の伸び率は8ヵ月ぶりに拡大に転じた。投資信託の残高は統計開始以来の過去最高を3ヵ月連続で更新しており、一部でリスク性資産への資金配分を積極化する動きが出ているとみられる。

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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