2014年06月30日

鉱工業生産14年5月~在庫の積み上がりがさらなる生産調整につながる恐れも

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・5月の生産は2ヵ月ぶりの上昇
・輸送機械の生産調整が続く
・在庫積の積み上がりが明確に

■要旨

経済産業省が6月30日に公表した鉱工業指数によると、14年5月の鉱工業生産指数は前月比0.5%と2ヵ月ぶりの上昇となったが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.9%、当社予想は同0.7%)は下回った。出荷指数は前月比▲1.2%と4ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比2.9%と2ヵ月ぶりの上昇となった。
5月の生産を業種別に見ると、駆け込み需要の反動から4月に前月比▲2.6%の低下となった輸送機械は前月比1.9%と持ち直したが、日用品(合成洗剤等)の駆け込み需要の反動から化学(除く医薬品)が4月の前月比▲3.2%に続き5月も同▲4.5%の低下となったほか、「ウィンドウズXP」のサポート終了に伴う買い替え需要のピークアウトなどから情報通信機械が前月比▲9.3%と大きく落ち込んだ。速報段階で公表される15業種中8業種が前月比で上昇、7業種が低下した。

14年5月の生産指数を6月の予測指数で先延ばしすると、14年4-6月期は前期比▲3.0%となる。6四半期ぶりの減産となることは確実だが、13年度後半の生産が駆け込み需要によって大きく押し上げられていたことを考えれば、このこと自体はあまり悲観的に考える必要はないだろう。
生産の減少以上に懸念されるのは在庫に積み上がりの動きが見られることだ。在庫指数は4月には前月比▲0.5%の低下となったが、5月は同2.9%と大きく上昇した。輸送機械の在庫指数が前月比27.3%の急上昇となっており、これは輸出向けの船待ちという一時的な要因の可能性もあるが、在庫指数を業種別にみると、4月は16業種中11業種、5月は15業種12業種が前月比で上昇しており、全体として在庫積み上がりの動きが明確となりつつある。
ここにきて在庫が積み上がっているのは、出荷指数の伸びが生産指数の伸びを大きく下回っているためである。直近3ヵ月(3月~5月)の生産の伸びは▲1.7%に対し、出荷の伸びは▲6.4%となっている。このことは消費増税後の最終需要の落ち込みが企業の想定以上となっている可能性を示唆している。また、消費増税後の出荷指数の落ち込み幅は前回の増税時を上回っている。今回は消費増税前の段階から企業が在庫の抑制を図ってきたため、在庫水準自体はそれほど高いとはいえず、企業の生産計画も現時点ではそれほど弱いものとは言えない。ただし、6月以降も最終需要が企業の想定を下回り、意図せざる在庫がさらに積み上がるようであれば、生産計画が下方修正され、さらなる生産調整を余儀なくされるリスクが高まるだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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