2014年06月06日

認知症カフェ-認知症の人を支える新たな社会資源づくりに向けて

  山梨 恵子

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1-早期に‘つながる’‘備える’

認知症は脳の器質性疾患により、記憶力、判断力、思考力、注意力などの機能低下が起こる病気だ。失行や失認などの症状が強くなれば、日常生活に不都合なことや困りごとも増えてくる。
   しかし、専門職の多くは、個別の人の機能低下に応じて生活環境を整え、混乱を生じさせない配慮ある関わりを続けることで、その人らしい落ち着いた生活を続けていくことは可能だと言う。大切なことは、より認知症の早期の段階で、本人・家族を支える様々な社会資源に‘つながる’こと。そして、その後に起こりうる状況に、早め早めの‘備え’を講じていくことであろう。そのためにも、本人・家族を孤立させることなく、早期のうちに地域の中の様々な社会資源や支援者に出会えるための『場づくり』が必要だ。


2-当事者ニーズからはじまった 認知症の人の居場所づくり

たとえば、認知症と診断されたからといって、すぐに介護サービスが必要になるとは限らない。むしろ、本人・家族が必要とする支援は、それまでの生活を維持するためのちょっとした支えや、不安な気持ちにいつも寄り添ってくれる支援者の存在だ。認知症カフェは、そんな当事者ニーズに応えるために、本人・家族がそれぞれに抱えているストレスを発散したり、地域の人との交流を通して気分転換が図れる場として生まれたインフォーマルサービスである。時には、認知症の人の「出来る力」を引き出しながら、失っていた「自信」を取り戻してもらうための働きかけもする。
   先駆者による取り組み事例を見てみると、運営主体は、医療関係、介護関係、ボランティア団体や家族の会などと実に多様である。また、それぞれが独自性の高い取組みを行っており、コミュニティ・カフェのような形態もあれば、空き家や介護事業所の一部を使ったサロンやミニ・デイサービスのようなところ、ミニコンサートや癒しの要素を取り入れたイベント型のものなど、運営形態や開催頻度も様々だ。
   カフェの形態はそれぞれ違っていても、これらは制度の枠に捉われることなく、当事者のニーズから生まれた新たな社会資源であることは間違いない。いずれも、採算度外視の社会貢献性の高い事業として展開されてきたものであり、そこに集う人が必要とする支援を見極め、制度や資源につないだり、介護や地域に関わる様々な情報を伝えるといった役割を当たり前のように果たしている。
   生活の中に様々起きてくる、「些細な困りごと」、「精神的ストレス」、「不安」などの‘ほころび’は、放っておけばおくほど、その穴をふさぐことが難しくなる。認知症カフェは、そのほころびが小さいうちに繕ってくれる様々な支援者達と出会える場所でもあるのだ。


3-今後の展開に期待

地域包括ケアシステムの構築が目指される中、住民、NPO、民間事業者などの力を借りて、当事者ニーズに対応する安価で柔軟な支援体制を整えようとする動きもある。今後は、各市区町村が主体となって、認知症カフェなどのインフォーマルサービスを積極的に整備していくことが期待される。
   一方で、量的な整備を急ぐあまり、これまで積み上げてきたことの形骸化を招くような事態は避けなければならない。先駆事例に見られる独自性や運営の柔軟性を尊重し、それぞれの事業所の強みを活かし、地域住民との調整を図りながらの手作りの居場所づくりを拡げていくことが大切である。さらに、認知症カフェが、単に、認知症の人やその家族の居場所を確保するための取り組みではないという理解も必要だ。地域住民と当事者との交流拠点となり、認知症の人と地域住民との垣根を取り除いていくこと。本人・家族が抱えている生活課題をすくい上げ、ニーズに応じた支援につなげる‘コーディネート機能’を発揮すること。こうした水面下での取り組みがあるからこそ、認知症の重度化を予防し、住み慣れた地域での継続的な暮らしを可能にしていく、価値の高い社会資源になり得るのである。

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