コラム
2014年05月26日

「アナと雪の女王」にみる社会の姿-「ありのまま」生きる “Let It Be” と “Let It Go”

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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ディズニーのアニメ映画『アナと雪の女王』が話題になっている。その劇中歌のひとつ『Let It Go~ありのままで~』が大人気だ。アレンデール王国家の長女・エルサが本当の自分に目覚めていく姿を描くストーリーの中で、ひたすら感情を抑えることをやめて、「ありのまま」でいいと歌い上げる歌詞に多くの人が共感を覚えるからだろう。アメリカでは映画を見ながら観客が歌う「シング・アロング」が好評で、日本の劇場でも『みんなで歌おう!』というイベントが全国各地で開かれた。

主題歌のタイトルになっている“Let It Go”は、直訳すれば「そのままにしておく」や「あきらめろ」という意味だが、日本語版の訳詞では、『ありのままの姿見せるのよ/ありのままの自分になるの』と、自分を偽った生き方から、自由に「ありのまま」生きる人生に変わるための応援歌になっている。

私がこの映画を見て印象に残ったことは、ストーリーの結末だった。これまでディズニー映画では困難に遭遇する女王が登場すれば、最後は“白馬の王子”が現れ、問題を解決してハッピーエンドになるはずだった。『アナ雪』には、女王エルサと妹のアナ、雪だるまのオラフ、山男のクリストフ、南諸国のハンス王子などが登場するが、最後にふたりの主人公エルサとアナを救ったのは“白馬の王子”ではなかった。この点でもディズニー映画が従来の枠組みにとらわれずに、テーマである「ありのまま」生きることを実践したストーリーであったように思われる。

このような映画が話題となる背景には、現代社会がいかに多くの制約を抱え、人々が息苦しく感じ、「ありのまま」生きることが難しいかを反映しているような気がしてならない。これまでも多くの女性はガラスの天井を打ち破ろうとし、男性はより強くなければならないという呪縛から解放されたいと願ってきた。『アナ雪』は、性別、年齢、人種、地位、学歴など人間のさまざまな属性を「ありのまま」受け入れ、人々が自分らしく生きようとすることを後押ししているのではないだろうか。

70年代以降大流行し、今も歌い継がれているザ・ビートルズの名曲“Let It Be”は、「変わらなくてはならない」という強い圧力のなかで、『いまを変えなくていい、ありのまま生きるのだ』と歌った。一方、『アナ雪』の“Let It Go”は、『いまを変えよう、ありのまま生きるために』と歌っている。

「ありのまま」生きるということは、変化の激しい時代には「変わらないこと」を、停滞している時代には「変わること」を意味するのかもしれない。“Let It Be”も“Let It Go”もそれぞれの時代の文脈のなかで、人間はいつも「ありのまま」生きていたい、と歌っているのではないだろうか。




 

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2014年05月26日「研究員の眼」)

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