2014年04月17日

消費税増税における「認知ラグ」の影響

  日本大学経済学部教授 小巻 泰之

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■要約

17年ぶりに消費税増税が実施された。消費税増税を巡っては,駆け込み需要の反動減を懸念する見方が多く示されている。この背景には,「駆け込み需要の反動減に,アジア通貨危機,北海道拓殖銀行や山一証券などの破綻が続き,景気は急速に悪化した」(読売新聞,2014年3月12日)とされているように,深刻な景気後退を経験した記憶があるからである。

今回の消費税増税の影響を巡っては,「97年の増税時と比べると,駆け込み需要の勢いが強い割には,反動減はそれほど大きくないとの見方が強い。民間の主要調査機関10社の予測(平均値)によると,1-3月期の実質GDP成長率(年率換算)は4.8%で前回増税前の3.1%より高い。逆に4-6月期は-3.7%と前回の-3.9%とほぼ変わらない。」(読売新聞,2014年4月1日),また,「1997年には,増税後の金融危機などで景気が失速したが政府はそれを教訓にとして,景気対策に万全を期す構えだ」(同)と報道されている。

ただし,この報道には明らかな問題がある。まず,前回増税時の実質GDP成長率(年率換算)である。2014年3月10日に発表されたGDP統計をもとに成長率を算出すれば新聞報道の数値に間違いはない。しかし,当時発表されたデータでは97年1-3月期は6.6%であり,4-6月期は-11.2%であった。つまり,GDPは事後的に数次にわたり改定される。また,1997年当時の景気後退要因を金融危機などとしているが,消費税増税との関係など因果関係が不明確である。

このように,過去を振り返るためには現時点で利用可能な情報や数値だけでは不十分である。本論では,GDP等の経済統計だけでなく,新聞報道から,97年当時の経済状況に対するコンセンサスを振り返る。ただし,本論では今回の消費税増税の影響が97年当時と同様になると考えているわけではない。そもそも経済環境が大きく異なる。しかし,過去の状況をより詳しく整理し評価することは今回の消費税増税の影響を測る上でも重要であると考える。本論では,電通「消費実感調査」(97年11月19日発表)で,経済状況の評価ではマスコミ報道から受ける影響が大きいことが示されているように新聞報道を中心に当時を振り返る。

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