2014年03月11日

欧州経済見通し~改善するユーロ圏債務危機国の評価と台頭するデフレ懸念~

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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  1. ユーロ圏の景気は回復基調を維持しているが、ペースはごく緩やかで、生産・雇用の水準は危機前のピークを下回っている。域内のばらつきも大きい。
  2. 債務危機国の経済は持ち直し、市場の評価も改善している。一部の新興国が呈する双子の赤字などの「症状」が劇的に改善、ユーロ圏の一員であることが、信用力を高め、安定をもたらす方向に働いている。しかし、過剰債務は解消しておらず、高失業という危機の後遺症と改革の副作用は深刻である。債務危機国の改革努力の継続、ユーロ圏レベルでの域内の分断解消、成長・雇用格差の是正への協調的取り組み、そしてECBの弾力的な金融政策による支えは欠かせない。
  3. 14年の成長率は1.2%と3年振りにプラス転化が見込まれる。インフレ率は14年が1.1%、15年も1.4%でエネルギー価格の押し下げ効果の残存、債務危機国の賃金・物価下落による競争力回復(内的減価)の影響による低インフレが続く。
  4. 英国の13年の成長率は世界金融危機以降で最も高い1.8%となった。14年~15年は2%台の成長を維持、インフレ率はBOEの目標近辺で推移しよう。
  5. BOEは、利上げ開始前に解消すべき生産能力の余剰があると判断している。利上げの開始は15年後半となろう。




ユーロ参加国の失業率とインフレ率(2014年1月)~債務危機国では物価が下落~

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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

(2014年03月11日「Weekly エコノミスト・レター」)

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