コラム
2014年02月17日

注目集めるビットコイン

櫨(はじ) 浩一

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1――注目集めるビットコイン

インターネット上で使われるお金である「ビットコイン」が注目を集めている。ご存じの方も多いと思うが、ビットコインは、サトシ・ナカモトと名乗る人物(正体不明)によって投稿された論文に基づいて、2009年に運用が開始されたインターネット上の通貨である。すべての取引履歴が分散された一種の台帳のようなものに記録されており、ビットコイン数は徐々に増加するが、最大で2100万と決められている。誰が発行しているかよくわからないのに、本物のお金の代わりに使われ出した。

円やドル、ユーロや人民元といった各国の通貨のように、法律で税金や賃金などを含む債務支払い方法として受け取りを義務付けられておらず、政府という後ろ盾を持たないことを不安視する人も多い。しかしその一方で、各国政府が発行しているお金の価値が信用できないからこそ、政府が関わらないビットコインが普及しはじめたという側面もある。

この仕組みを完全に理解したとは言えないので誤解があるかもしれないが、完全に分からなくても、今どうするかを決めなくてはならないというのが現実の社会だ。

2――世の中にタダのものはない

違法取引やマネーロンダリングに使われやすいことや、技術的な問題を指摘する人もいるが、筆者が不安に思うのは、ビットコインのシステムがどうやって維持されていくのかという点だ。

ビットコインは交換所で円やドルで買うこともできるし、「採掘」と呼ばれる計算作業をコンピュータにさせることでも入手できる。ビットコインを採掘することは、地中にある金銀や宝石を掘り出すことに例えられるが、実際には、取引を正確に記録し不正が無いように認証するための作業をコンピュータにさせることだ。多くの人がビットコインを手に入れようとして、自分のコンピュータを使って「採掘」することで、システムは維持される。

ビットコインを入手することは次第に難しくなるので、コンピュータを購入し、多額の電気代を支払って計算をしたのに、何も手に入らない人も増えるだろう。ビットコインの採掘に携わるのは、一獲千金を狙う少数の人たちだけになって、システムが維持できなくなる恐れが大きいのではないか。既に、我々が持っているような普通のパソコンではビットコインを発掘できる可能性は非常に低くなっていて、高性能のコンピュータで長時間計算作業をさせる必要があるそうだ。

金や銀の利用と決定的に違うのは、発掘する人がいなくなっても掘り出された金銀はそのまま利用できるが、ビットコインはシステムを維持するためのコンピュータ作業を行う人がいなくなれば取引できなくなってしまうということだ。採掘が困難になると、次第に取引手数料がインセンティブになってシステムが維持されるようになると説明されている。ビットコインの取引が膨張して行ったときに、常に安定的にシステムが維持できるかどうかは確信が持てないので、様子を見るしかないだろう。

3――ビットコインの魅力と問題

ビットコインが魅力的なのは、海外送金や電子決済にかかる費用が非常に安いということだ。しかし、一方で少なくとも現時点では価値が非常に不安定だという問題がある。1ビットコインは一時1200ドルくらいまで上昇したが、2014年2月現在では600ドルくらいになっている。1ビットコインを送金すれば、相手は確かに1ビットコイン受け取るのだが、600ドル分送金したつもりが、受け取った側では何ドル分に換金できるかは確実ではない。もっともこの問題は、現実の世界でビットコインによる商品やサービスの売買が大きく広がれば、現実の円やドルと同じように、1ビットコインでどれだけの物が買えるかはそれほど大きく変動しなくなり、次第に解決されるだろう。

しかし一方、現実にはビットコインの価値の変動の大きさが多くの人を引き付けていることも否めない。特にビットコインは発行量が限られているのだから、長期的には価値が上がるはずだという期待から、ビットコインを入手しようという人も多い。こうした値上がり期待でビットコインを入手することは投機という意味合いが濃い。量が限られていれば価値が下がらないというものではないことは、金や銀の相場を見れば明らかだ。利用の拡大が続けば、供給量の限られたビットコインの価値は長期的には上昇する可能性が高いが、例えば10年くらいという長期の期間でみても相当大きな価値の変動がありうるだろう。
1ビットコインの価格
新しいものに抵抗を感じるのは筆者の年齢的な問題もあるかも知れないが、ビットコインの意義を送金や決済のコストが安いことだと割り切れば、現時点では価値が不安定だという問題が大きい。ビットコインの価値の値上がりを期待するのはリスクが大きく、個人としては、価値が安定するまで少し様子を見ればよいという結論になるだろう。
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